スポーツ

直前まで休憩、髪はボサボサ 世界選手権の羽生結弦に何があった?

羽生選手の珍しい不調

羽生選手の珍しい不調(RyuVoelkel/AFLO)

 14時46分──羽生結弦選手(26才)の世界選手権でのフリー演技(3月27日)が始まるとき、現地の時計は奇しくも「運命の時刻」を指していた。

 10年前、2011年3月11日のこのとき、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0、最大震度7の東日本大震災が発生し、高さ15mに達する巨大津波が沿岸地域を襲った。震災発生時、まだ16才だった羽生選手は、地元にあるスケート場・アイスリンク仙台で練習に励んでいる最中だった。

 家族とともに体育館での避難生活を余儀なくされ、生きるだけで精一杯の日々。リンクが被災して閉鎖したこともあり、スケートを辞めることも考えたという。だが、彼は拠点を移して滑り続け、リンクに立つことで復興支援に尽くした。数多くのチャリティーイベントやアイスショーに出演し、自身の書籍の印税などは、全額寄付。その額はトータルで1.9億円を超えている。

 五輪2連覇を達成したときも、羽生選手の胸には常に復興への祈りが刻まれていた。そして迎えた今回の世界選手権。羽生選手がスウェーデン・ストックホルムに出発する前日の3月20日夜には、宮城県沖を震源とする最大震度5強の地震が発生した。

 コロナの不安に加え、地元の地震被害に後ろ髪を引かれる思いでの現地入り。そしてショートプログラム(以下SP、3月25日)でトップに立った瞬間、彼のフリーの滑走時刻は14時46分に決まった。だが、演技が始まる直前、羽生選手は再び大きな試練を受けていた。

試合前、リンクに背を向けた

 フリーの彼の演技は、誰の目にも「らしくない」ものだった。ロックスターのようだったSPとは打って変わり、淡い水色を基調にした優雅な衣装に身を包んだ羽生選手が、戦国武将・上杉謙信を描いたNHK大河ドラマ『天と地と』のテーマ曲に乗って滑り始める。

 しかし、冒頭のスケーティングからいつものようなスピード感がない。最初の4回転ループで着氷が乱れ、手をついてしまう。続く4回転サルコウでも大きくバランスを崩す。そして得意のトリプルアクセルから連続ジャンプにつなげられない痛恨のミス。米国のネイサン・チェン選手(21才)だけでなく、日本の鍵山優真選手(17才)にも後れを取り、まさかの3位に甘んじた。

 フィギュアスケート解説者の佐野稔さんも、この結果に驚きを隠せない。

「SPの演技がよかっただけに期待されましたが、フリーではあまり体が動いていなかった。チェン選手が4回転ジャンプを5本入れ、あまりに完璧な演技をしてきたので、ひとつのミスも許されないというプレッシャーもあったのかもしれない」

関連キーワード

関連記事

トピックス

「鴨猟」と「鴨場接待」に臨まれた天皇皇后両陛下の長女・愛子さま
(2025年12月17日、撮影/JMPA)
《ハプニングに「愛子さまも鴨も可愛い」》愛子さま、親しみのあるチェックとダークブラウンのセットアップで各国大使らをもてなす
NEWSポストセブン
SKY-HIが文書で寄せた回答とは(BMSGの公式HPより)
〈SKY-HIこと日高光啓氏の回答全文〉「猛省しております」未成年女性アイドル(17)を深夜に自宅呼び出し、自身のバースデーライブ前夜にも24時過ぎに来宅促すメッセージ
週刊ポスト
人の出入りが多く流行っていたという火災があったサウナ店
《夫婦が閉じ込められ…》月額39万円の高級サウナ店での火災でサウナーたちに広がる不安 彼らはなぜ\\\"避難シミュレーション\\\"を議論するのか
NEWSポストセブン
今年2月に直腸がんが見つかり10ヶ月に及ぶ闘病生活を語ったラモス瑠偉氏
《直腸がんステージ3を初告白》ラモス瑠偉が明かす体重20キロ減の壮絶闘病10カ月 “7時間30分”命懸けの大手術…昨年末に起きていた体の異変
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《独占スクープ》敏腕プロデューサー・SKY-HIが「未成年女性アイドル(17)を深夜に自宅呼び出し」、本人は「軽率で誤解を招く行動」と回答【NHK紅白歌合戦に出場予定の所属グループも】
週刊ポスト
世間を驚かせたメイプル超合金のカズレーザー(41才)と二階堂ふみ(31才)の電撃“推し婚”
【2025年・有名人の結婚&離婚を総決算】何かと平和な「人気男性タレントと一般女性の結婚」、離婚決断が女性からの支持につながった加藤ローサ
女性セブン
米倉涼子
《米倉涼子の自宅マンション前に異変》大手メディアが集結で一体何が…薬物疑惑報道後に更新が止まったファンクラブは継続中
火事が発生したのは今月15日(右:同社HPより)
《いつかこの子がドレスを着るまで生きたい》サウナ閉じ込め、夫婦は覆いかぶさるように…専門家が指摘する月額39万円サウナの“論外な構造”と推奨する自衛手段【赤坂サウナ2人死亡】
NEWSポストセブン
自らを「頂きおじさん」と名乗っていた小野洋平容疑者(右:時事通信フォト。今回の事件とは無関係)
《“一夫多妻男”が10代女性を『イヌ』と呼び監禁》「バールでドアをこじ開けたような跡が…」”頂きおじさん”小野洋平容疑者の「恐怖の部屋」、約100人を盗撮し5000万円売り上げ
NEWSポストセブン
ヴァージニア・ジュフリー氏と、アンドルー王子(時事通信フォト)
《“泡風呂で笑顔”の写真に「不気味」…》10代の女性らが搾取されたエプスタイン事件の「写真公開」、米メディアはどう報じたか 「犯罪の証拠ではない」と冷静な視点も
NEWSポストセブン
来季前半戦のフル参戦を確実にした川崎春花(Getty Images)
《明暗クッキリの女子ゴルフ》川崎春花ファイナルQT突破で“脱・トリプルボギー不倫”、小林夢果は成績残せず“不倫相手の妻”の主戦場へ
週刊ポスト
超有名“ホス狂い詐欺師風俗嬢”だった高橋麻美香容疑者
《超有名“ホス狂い詐欺師風俗嬢”の素顔》「白血病が再発して余命1か月」と60代男性から総額約4000万円を詐取か……高橋麻美香容疑者の悪質な“口説き文句”「客の子どもを中絶したい」
NEWSポストセブン