国内

なぜヤクザは「負のサービス産業」と呼ばれるのか

長年のヤクザ取材の経験から語りつくした溝口氏

ヤクザの稼ぎ方を詳しく分析する溝口氏

 暴力団が絡んだ抗争事件や経済事件などはしょっちゅう報じられているが、そもそも彼らがどのように稼いで生活しているのかという根本を解説した記事はほとんどない。

 長年暴力団取材を行ってきたノンフィクション作家の溝口敦氏は、フリーライター・鈴木智彦氏との共著『職業としてのヤクザ』(小学館新書)で、知られざるヤクザ業の本質に迫った。

 * * *
 ヤクザ業の本質は「つまみ食い」です。簡単に儲かりそうなネタに出合うと、その仕事が合法か、非合法かに関係なく参加したがります。

 もし彼が金持ちのヤクザであるなら、持ち金を遊ばせておくより、カネにカネを稼がせてやろうと、そのネタに資金を突っ込みます(出資や投資)。

 たとえば金インゴットの密輸です。日本では金の買い取りに消費税10%が加算されます。海外では金の売買に消費税や付加価値税がかからない国がいくつかあります。そういう国で金インゴットを買い付け、帰国し、日本の税関を無申告で通って、国内の貴金属商にインゴットを売却すれば、買い値に10%の消費税を上乗せしてくれます。

 これで消費税分10%の丸儲けになります。

「これはいいや。香港(金の売買が非課税)ぐらいなら航空代もタカが知れている。4キロも買い付けて日本に持ち込めば確実に儲かる」

 と、始められたのが金インゴット密輸でした(現在は新型コロナウイルスによる格安航空機の運航停止と、日本の通関業務の厳格化でほぼ不可能)。

 つまりこうした金塊密輸に買い付け資金を出資する金持ちヤクザもいるし、計画して密輸団を動かすヤクザもいます。カネがまるでなく、単に密輸団に加わって金塊の運び屋になるヤクザもいるわけです。

 ヤクザは一つの商売にしがみつきません。もう儲からないと見たら、パッとやめます。

 唯一、長期継続的に手掛けているのが覚醒剤の密輸と国内販売です。国内には多数の依存症患者がいます。依存症の人は違法であっても、覚醒剤を摂取したくて仕方がない。そこに根強い需要が生まれます。違法であっても、誰かが依存症者に覚醒剤を届けるというサービスを買って出ます。それがヤクザなのです。

 だからヤクザは負のサービス業に従事していると言われるわけです。違法の業だから逮捕・服役の危険がある。しかし、その分、競争率は低い。カタギの人は覚醒剤みたいな危ない物には触れません。使用も所持も売買も譲渡もすべてご免です。手掛けるのはヤクザぐらいですから、当然、その分、利幅は大きくなり、たっぷり儲けることになります。こういう事情で覚醒剤がヤクザの伝統的なシノギになりました。

かつては社会的な需要があった

 伝統的なシノギとしては他に恐喝、賭博があります。

 恐喝は、俺は何々組の何某だ、カネを出さないとひどい目に遭わせるぞと、カネを脅し取る犯罪です。しかし、これは被害者の前に最初から姿を現し、かつ所属を明らかにしていますから、逮捕される度合いが高い。だから今は年々減少している犯罪です。逆に被害者とは電話の折衝とカネの受け渡しだけで、顔も所属も明らかにしないオレオレ詐欺など特殊詐欺のほうが儲けが大きくなるわけです。

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