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米国が期待し中国が警戒する「日本の真の軍事力はもっと上」

尖閣周辺では、すでに日中は一触即発(海上保安庁提供=時事)

尖閣周辺では、すでに日中は一触即発(海上保安庁提供=時事)

 すでにNEWSポストセブンでリポートしたように、アメリカの知日派として知られるマイケル・グリーン元国家安全保障会議アジア上級部長は、アジアの安全保障において、アメリカは自ら深く関与する方針を改め、日本がハブ(中心)となる多国間同盟へと転換させることを目指していると指摘している。日本政府が4月16日の日米首脳会談の主要テーマを安全保障だとしていることからすると、会談では中国封じ込めを念頭に置いた日米の新しい同盟関係が話し合われる可能性が高い。

 日米関係に長く携わった日本政府の元高官に首脳会談をどう見ているか尋ねると、「アメリカ政府の方針はまだはっきりしないが、いずれにしても我が国はアメリカとの同盟に軸足を置いてアジア戦略を考えることになる」と答えた。少なくとも日本が独自にアジアの同盟構築を進めることはない、あくまでアメリカの意向を受けて動くというニュアンスだ。しかし、アメリカはもはやアジアの安全保障に多くの予算や軍を割く余裕はない。中国の膨張を抑え込むには日本の積極的な関与が不可欠であるという考えが政権の主流であり、日本がより大きな責任と負担を求められることは間違いない。

 アメリカの軍事情報サイト「グローバル・ファイアーパワー」は、2020年の世界の軍事力ランキングを発表した。それによると、1位はアメリカ、2位はロシアで、中国は3位にランクされている。さらに4位にインド、そして5位が日本である。これを額面通りに受け止めれば、アメリカが日本、インド、オーストラリアと新たな同盟を模索していることと、グリーン氏の指摘は合致する。世界4位の軍事力を持つインドと5位の日本が協力すれば、中国を包囲して軍隊の活動を抑えられるという戦略だ。

 また、中国の政府系メディアは最近、日本の「潜在的軍事力」に注目する記事を相次いで発表している。それらによれば、日本の潜在的軍事力を支えるのは「工業力」だとされている。インドは世界4位の軍事力を持つものの、武器や兵器に関しては「買うことしかできず、自前で生産する能力はない」ため恐れるに足りぬ存在だとしている。一方で日本は、「核兵器以外のすべての武器・兵器を生産する能力があり、現に第6世代戦闘機をはじめとする次世代兵器の開発に着手している」として警戒している。軍事力ランキングに表れない「潜在的軍事力」で見れば、日本は「間違いなく世界一」だというのである。

 アメリカが日本にアジア戦略をバトンタッチしようとしていること、同時に中国が日本の軍事力を警戒する姿勢を露わにしていることは表裏一体だ。アメリカのアジア戦略を常に研究している中国は、今後はアメリカに代わって日本(自衛隊)が仮想敵になることを暗示しているのだろう。

 中国政府系メディアは、日本の潜在的軍事力について、工業力のほかにも、「すでにヘリを運用できる護衛艦を保有し、これを空母に改装する計画もある」とか、「原子力技術と燃料を保有しており、憲法とアメリカの制約がなくなれば短期間に核兵器を製造できる」などと警戒している。

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