バイデン氏はもともと親中派でもある(AFP=時事)

バイデン氏はもともと親中派でもある(AFP=時事)

 アメリカ軍がアジア・太平洋から撤退するようなことは考えられないが、日本が中心となって同地域の安全保障を担うとすれば、中国軍と対峙するための空母や核を自前で持つほうが軍事的に有利なのは間違いない。前出の元高官に、日本は本当に核兵器を製造できるか問うと、「これは日本だけの問題ではなく、核兵器の原料となるウランはもはや世界中探しても多くはない。中国軍と対峙するだけの量を日本が確保するというのは現実的ではない」と否定的な考えを示した。しかし、もし日本が近い将来、原子力発電を放棄して代替エネルギーを確保できるならば、原発に使う予定だった核物質を兵器転用することも理論的には可能だろう。

 筆者はかつて、石原慎太郎氏が東京都知事だった時代、同氏の訪米に際してニューヨークで同氏の講演会をアレンジしたことがある。石原氏は、いずれ米中がアジア太平洋で軍事的に対立することは不可避であり、実際に戦火を交えることがあれば中国に分があると指摘して会場をざわつかせた。同氏は兵力や装備の比較ではなく、主に両軍の士気に差があることを重視していた。つまり、この地域で大きな犠牲を払ってでも主導権を握りたい中国と、むしろ大西洋に目を向けているアメリカでは覚悟が違うということだ。

 石原氏の予言が的中するかはともかく、10余年を経て同氏の指摘した状況は現実に訪れた。ただ違うのは、アメリカは中国と直接対決するのではなく、その役目を日本に果たさせようとしていることだ。菅義偉・首相がその要求を受け入れることは簡単ではないだろう。尖閣諸島や北朝鮮問題でバイデン大統領のリップサービスをもらえたとしても、それと引き換えにするにはあまりにも重い難題だろう。日本の軍事力がいかにあっても、そして自衛隊の士気が高くても、日本政府に覚悟がなければ宝の持ち腐れになる。

■佐藤則男(ニューヨーク在住ジャーナリスト)

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