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依然相次ぐ自主休校 子供たちの深刻な「学力格差」にどう向き合うべきか

学校側も感染対策はとっているのだが……(イメージ)

学校側も感染対策はとっているのだが……(イメージ)

 一年以上にわたる、新型コロナウイルスの感染拡大による経済の混乱は、世界で貧富の格差を拡大させたと言われている。日本でも格差の拡大は各所であらわれており、なかでも、子供たちの学びをめぐる残酷な現実が顕在化しつつある。ライターの森鷹久氏が、コロナで急拡大する子供たちの学習格差に直面させられている教師たちの嘆きをレポートする。

 * * *
 新型コロナウイルスの感染者が全国で増加する中、小中学校、高校や大学の授業は通常通り行われているが、保護者などが子供を「自主休校」させる事例が相次ぎ、その数は実に7000人以上だという。感染予防策としてはやりすぎな気もするが、基礎疾患を持った人が家族にいるため、念の為の措置、という人も少なくないのだろう。

 しかし、こうした騒動の裏で着実に「格差」が拡大している、と話すのは、関東某市の公立中学校教諭・野中邦彦さん(仮名・30代)である。

「自主休校だと、お子さんへの授業ができません。個別に宿題や課題を出すのにも限界がある。学校全体が休校になった時も、ある程度の課題を出しましたが、やってくる子と何もしない子の差が出て、学力差は確実に開いていると感じています」(野中さん)

 野中さんの勤務する学校でも、数名の生徒が親の意向によって登校を見送り、自宅学習に取り組んでいる。その生徒たちの学習状況をみると、リモート式の学習塾に在籍し、自宅のパソコンなどを使って、中学校の授業より早いペースで学習を続けている生徒がいる一方で、学校が休みだから、ということで怠惰になり、勉強をほとんどしていない生徒も目立つという。

「もちろん、親御さんによって子供の学習への関心の高さは違います。でも、コロナ禍以降はその差が激しくなった。近隣中学では、学校が休みだったり時短の方が塾の授業を受けやすく、学校からの宿題を減らして欲しい、なんて要望が出ています」(野中さん)

 では、塾に行ってない生徒はどうなのかと言えば、自宅で親と一緒に学習に取り組んでいる子もいるのだが、「ほとんど勉強をしない」という子供達も確実にいる。単に子供の学習意欲が低いとか、親の意識が低いとかいうわけではなく、親がコロナ禍に翻弄されていることで、そうならざるを得ないのではないかと見られている。

「学校の授業が減り、部活がなくなり、家にいるしかないという子供達は、勉強せずにずっと家でゲームしたり、漫画を読んだり。その生活態度を注意するはずの親御さんは、コロナ禍で仕事の事情が変わりすぎて、家庭を顧みる余裕を無くしている人が多い。働くために職場へ出ずっぱり、非正規社員のため仕事が減らせない、リモートワークへ移行できないなど、落ち着かないパターンばかり。裕福な家庭の子はどんどん学習が進み、そうでない家庭の子がほったらかしにされているようにしか見えない」(野中さん)

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