売り主が一流企業なら補償もするが…
今回のタワマンもそうだが、売り主企業は財閥系の名の知れた会社。結局、こういった欠陥住宅と言えるマンションの事例は、一流企業が売り主であっても起こり得るのだ。
もちろん、高度な建築技術を要するタワマンでも条件は同じ。所詮は人間のやることであり、故意や過失に関わらず不具合は起こり得る。一流企業が売り主だから安心、ということにはならない。
ただ、一流企業が売り主であるマンションを選ぶ理由はある。一流であればあるほど、彼らは自らの信用やブランド価値を尊重する。一旦自らの非を認めれば、しっかりと補償を行おうとする。
今回のタワマンの事例でも、売り主企業は新築時の販売価格に1割を上乗せした金額での買い戻しを提案しているという。あるいは、補修工事の間の仮住まい費用も補償する方針であるという。こういったことは財務的なゆとりのある一流企業でなければできないことであろう。
「耐震偽装事件」は購入者が泣き寝入り
2005年に発覚した「耐震偽装事件」を覚えておられる方も多いと思う。構造計算を行う一級建築士が、顧客であるマンションデベロッパーの歓心を買うために故意に建築コストが軽減できる耐震偽装を行った事件である。
耐震偽装事件を受けて2009年に再建されたマンション(神奈川・川崎/時事通信フォト)
あの時の売り主企業は、業界でいえば中小クラス。事件発覚後にあえなく倒産してしまった。だから、その売り主のマンションを購入した人々は自力で建て直さざるを得なかったのだ。中には住宅ローンを二重で借り入れた方も多いと聞く。
あの耐震偽装事件に比べれば今回のタワマンの欠陥発覚や横浜の杭未達の事象は、まだ買い手側に救いがある。割り増しで買い戻してもらえたり、仮住まい中の費用が補償されている。少なくとも、表面的な経済的損失がカバーされているのだ。