作家の井沢元彦氏
米国の人権団体の一部が私に同調してくれましたが、結果的にボイコットする国はなく、北京五輪は行なわれました。当時は五輪開催で「中国の民主化も進むだろう」というような善意にあふれる見方も多かった。しかしそれは甘い考え方だったと言わざるを得ません。
その後、中国の国際的なステータスは上がり、より傲慢になっていきました。「一帯一路」(2013年に習近平が提唱した中国からヨーロッパにかけての巨大経済圏構想)を打ち出し、尖閣諸島を巡っては日本に挑発行為を繰り返している。近年は台湾や香港への支配を進めるなど、明らかに“世界征服”の野望をむき出しにしています。
前回と同じく今回も私のボイコット論は「日中友好に反する」などのバッシングを浴びるでしょう。私自身、五輪を目標に研鑽や努力を重ねているアスリートの方々には誠に申し訳ないと思っています。しかし批判する人たちには、五輪ボイコットによって中国の“真の民主化”や“人民の幸せ”に繋がる可能性について考えてほしい。
今こそ、五輪そのもののあり方や意義を見直す時期が来ているのです。
※週刊ポスト2021年4月30日号