志村けんは最初はテンポが合わなかった(共同)
荒井注さんが辞めて、志村が入った時、一番感じたのは若返ったな、ということでした。それまでのドリフの昭和の音楽と、志村が好んでいた音楽とではテンポが違うんですよね。志村のほうがアップテンポで他のメンバーが昭和のリズムだから、ちょっと合わなくて1年くらいは志村が苦労したと思う。どうしても志村だけ浮いちゃうんだよね。
でも、志村が「カラスの勝手でしょ」をやった時に、あれはテンポがゆっくりじゃないですか。それがまさにドリフのテンポだったからぴったりとハマって、それからは志村が自分の実力を発揮するようになっていった。それで、今度は早口言葉をやろうとか、だんだんリズムがアップテンポになっていった。
ドリフの笑いというのは、わかりやすくて真似しやすいんですよね。だから皆さんが喜んでくれたんだと思います。大人向けとか子供向けとか、そういうことも考えていませんでした。今はいろいろやれないことがあるでしょ? 僕らがやってた食べ物を粗末に扱うコントとかね。もちろん時代の違いなんだけど、ドリフが俗悪番組だとか言われながらも許されていたのは、例えば食べ物を粗末に扱ったとしても、コントの中で必ず怒られるんだよね。やっちゃいけないことをやるから面白いんだけど、親の代わりにいかりやさんが必ず僕らを怒るんだから、子供だっていけないということはわかるんです。そして、そのいかりやさんはメンバーからどんどん浴槽に落っことされたりする。上司をやっつけるんだから、サラリーマンも痛快に思いながら見てくれたんじゃないかなあ。