YouTubeなどのプラットフォームの発達とともに日本の歌謡曲やJ-POPが発掘され、再評価される機会が増えている。特に、山下達郎など洋楽に影響を受けて日本で独自に発達した1970~80年代の音楽は「シティポップ」として、世界的な注目を浴びている。その潮流に松たか子がハマるのには、「理由がある」と松尾氏は言う。
それは、松たか子の “本当の夫”である音楽プロデューサー・佐橋佳幸氏の存在だ。
「松さんのパートナーである佐橋佳幸氏は、プレイヤーとしては日本のセッションギタリストのトップ中のトップであり、山下達郎さんのバンドの要的な存在。さらに、実績あるプロデューサーとしてもご活躍されています。そんな環境で、松さんのもとには膨大な音楽シーンの最新情報が届いているわけです」
歌の才能だけではなく、音楽的センスを支えるパートナーを持つ松たか子。トレンドを取り入れた最新楽曲にもスムーズに対応できるのは、その環境にもよるのだろう。最後に、歌手・松たか子の魅力が存分に発揮されている楽曲を松尾氏に挙げてもらった。
「ドラマ『カルテット』(2017年、TBSテレビ系)の主題歌『おとなの掟』(作詞・作曲/椎名林檎)は、松さんのポップス・シンガーとしての“情報処理能力の高さ”が圧巻です。ともすれば情報量過多で胃もたれしかねない楽曲ですが、彼女の“引き算の美”により、歌唱力と表現力が生きています。松さんの楽曲の中でもベストのひとつでしょう。椎名林檎さんのセルフカバー曲などとも聴き比べてみてください」
5月4日21時から放送予定の『大豆田とわ子と三人の元夫』の第4話は、松田龍平演じる1番目の元夫・田中八作がキーマンとなる回だ。エンディング楽曲で誰がどのようにフィーチャリングされるのかにも注目したい。
【解説者プロフィール】松尾潔(まつお・きよし)/1968(昭和43)年、福岡市生まれ。早稲田大学卒業。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。SPEED、MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。その後、プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、東方神起、三代目J SOUL BROTHERS、JUJU等を成功に導く。これまで提供した楽曲の累計セールス枚数は3000万枚を超す。日本レコード大賞「大賞」(EXILE「Ti Amo」)など受賞歴多数。今年2月、初の書き下ろし長編小説『永遠の仮眠』(新潮社刊)を上梓した。