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相撲部屋の所有実態で読み解く 親方とは別の「裏オーナー」たち

相撲部屋の知られざる運営実態とは(時事通信フォト)

相撲部屋の知られざる運営実態とは(時事通信フォト)

 公益法人である日本相撲協会を構成する相撲部屋の所有者は、当然、部屋の親方だと思うだろう。だが実際には、1億~2億円という高額でやりとりされて親方株の他に、稽古場という不動産の取得にかかる別途数億円が必要になると言われている。

 そこまでの資金を用意できるケースは限られるため、近年、目立つのが、部屋の土地や建物の所有者は先代の親方のままで、継承した親方が賃料を払っていく方法だ。そうなると先代は後継者指名での発言力など、退いても実権を握ることが多い。つまり部屋の“本当のオーナー”が分からないと、部屋運営の実態は見えてこない。そこで、『週刊ポスト』編集部では公開情報である不動産登記を取得・調査し、全部屋の所有者の実態を総力取材した。

 その結果、部屋の所有者が親方本人であるのは、42部屋のうち28部屋。

 先代から売買で取得しているケースと、新たな場所に独立したケースがあるが、いずれも取得時に1億~5億円の抵当権や根抵当権が設定されていた。部屋を開くために巨額の資金が必要となる実態が浮かび上がる。

 八角部屋(元横綱・北勝海)、芝田山部屋(同・大乃国)、伊勢ヶ濱部屋(同・旭富士)ら、資金が豊富とみられる横綱経験者の親方衆は「自己所有物件」で部屋を開いている。

 東京・江東区にある尾車部屋(元大関・琴風)は4億3000万円、墨田区に位置する錦戸部屋(元関脇・水戸泉)は5億円という高額の根抵当権が設定されていた。

「錦戸部屋は賃貸マンションを併設しているため物件が大がかりになった。部屋の上をマンションにして、その賃料収入で建設費を返済していく“ビジネスモデル”の部屋は複数ある」(ベテラン記者)

 先代からの継承の場合、「部屋に所属する力士」によって物件価格が変わるともいわれる。

「所属力士も一緒に引き継ぐ場合は、関取が多いほど力士養成費など協会から受け取れるカネが多くなる。そうした“部屋としての価値”が物件価格に上乗せされる慣行があるとされる」(同前)

 その一方、後継者の親方が物件を取得せず、所有者が先代やその遺族のままになっているケースは6部屋が確認できた。高砂部屋は土地が先代の元・朝潮、建物は先代夫妻の共同名義。荒汐部屋(元前頭・蒼国来)、友綱部屋(元関脇・旭天鵬)は土地・建物が先代名義、武蔵川部屋(元横綱・武蔵丸)は元関脇・富士櫻が中村部屋として使っていた物件に入居しており、土地・建物は富士櫻名義のままだった。

 間借りしている親方の多くが帰化して日本国籍を得た親方たちだ。高砂部屋を継いだ元・朝赤龍もモンゴル出身である。

「先代の関係者からの賃貸の場合、本命の後継者に部屋を譲るまでの“つなぎ”と位置づけられているケースが少なくない。大鵬部屋を引き継いだ大嶽部屋(元十両・大竜)も、物件を所有するのは大鵬親方の遺族で、部屋には現在の親方用の個室さえない。大嶽部屋には、大鵬親方の孫3人が入門しており、いずれはそのうちの1人が部屋を継承するのが既定路線とみられている」(二所ノ関一門関係者)

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