真夏でもマスクが当たり前になって好都合と喜ぶ人もいる(イメージ、時事通信フォト)
筆者は、昨年、初めての手術を受ける前の中田さんの写真を見せてもらったが、正直に言ってその変化は「多少」ではない。また、筆者には明かさなかったが、胸部の印象もだいぶボリュームアップしている。顔などの見えるパーツだけでなく、全身にメスを入れている可能性が高いように見受けられた。
「コロナ禍で、美容整形に興味を持つ人はかなり増えました。理由はやはり人に会わなくていいから、です。マスク着用が常識みたいな世界になりましたし、術後のデメリットと言われていたものが、今はない」
こう話すのは、都内の美容外科に勤務する医師・富永祥一さん(仮名・40代)。人に会う機会が減ったからこそ「整形を」ということには矛盾がある気もするのだが、利用者にとって、術後に「人と会わない」時間は重要、ということなのか。病院側も、この期を逃すまいと広告宣伝費用を投入し、お得なプランをどんどん打ち出したという。もちろん、ほとんどの患者は二重手術などの「プチ整形」にとどまるが、中田さんのように次々と色々な部分を直そうとする「のめり込み」の兆候が強い患者数は、コロナ禍で増えているというのが、冨永さんの印象だ。一度目の緊急事態宣言前に初めて施術し、二度目、三度目の緊急事態宣言前に「リピーター」として訪れる客もいたという。もちろん懸念もある。
「短い期間に何度も病院に来ては、ここを手術して、今度はここで……と無理な要求をされる患者さんもいる。患者さんの体を考えて無理をしないようすすめるのですが、やはり『今しかない』と別の病院に行かれる。正直、お金さえ払えば患者の希望通りに執刀する医師もいますから、破滅的な結末にならなければよいと願うばかりです」(冨永さん)
別の美容外科関係者に聞いたところ、コロナ以前に人気だった格安の「韓国整形旅行」に行けなくなった女性たちが、国内の病院を訪れるようにもなった、とも。その韓国でも、コロナ禍をきっかけに整形手術をする韓国人女性が多く、業界の売上額は伸びているという。
コロナ禍を期に、にわかに活気づく業界。整形することへの賛否もあろうが、分別のある大人の女性が、自分の資金で美容整形をすることについては、本人の自由であり、権利でもあろう。ただし、のめり込みすぎたり、誰かが焚きつけたようなブームに安易に乗ることは避けた方がよい。冨永さんが言うような、患者のことを考えない医師は残念ながら存在しているし、医師免許を持たないヤブ医者が、時流に乗ってこっそり荒稼ぎを始めている、というような噂も飛び出しつつあるのだ。