芸能

放送禁止歌は解禁されても、炎上恐れた自主規制が増える現代の矛盾

美輪明宏が1971年まで使用していた旧芸名で1965年7月に発売されたレコード

美輪明宏が1971年まで使用していた旧芸名(本名)で1965年7月にキングレコードから発売されたシングルレコード

 テレビやラジオでかけられない曲、「放送禁止歌」というものがある。1959(昭和34)年に、日本民間放送連盟(民放連)が「要注意歌謡曲指定制度」を発足させ、「要注意歌謡曲一覧表」という内部通達の文書作成したのだ。

 ランクは3つあり、「A」は放送しない、「B」は歌詞はダメだがメロディーは放送しても大丈夫、「C」は不適切な個所を変えればOKというもの。拘束力はなく、自主規制の基準である。

 1960年代後半から1970年代前半のフォークソング全盛期は、政治的あるいは反社会的なメッセージが問題視され、放送禁止となった曲も多かった。また、差別用語を使用しているということで、放送禁止となった例もある。

 1965年に丸山(現・美輪)明宏が発表した『ヨイトマケの唄』は、いわゆる「日雇い労働者」について歌っていたために、大ヒットしているにもかかわらず、いつのまにか放送の表舞台から姿を消した。

 こういった放送禁止歌にスポットが当たるようになったきっかけの一つが、映画監督で作家の森達也さんが1999年に制作し、フジテレビで放送された『「放送禁止歌」~唄っているのは誰? 規制するのは誰?~』というドキュメンタリー番組だ。そして、2000年には桑田佳祐が『桑田佳祐の音楽寅さん ~MUSIC TIGER~』(フジテレビ系)で『ヨイトマケの唄』を歌った。

 このとき、桑田が歌唱する前に《この唄は、俗に放送禁止用語と呼称される実体のない呪縛により長い間、封印されてきた。今回のチョイスは桑田佳祐自身によるものであり、このテイクはテレビ業界初の試みである》というテロップが表示された。サウンド・パフォーマンスを行うアーティストで“放送禁止歌”に詳しい、とうじ魔とうじさんはこう話す。

「桑田さんは『禁止じゃないから、歌っていい』と考え、名曲を埋もれさせてはいけないと動いた結果、番組で歌えることになったのでしょう。

 要注意歌謡曲指定制度は1983年に廃止されて効力は失っていますが、番組制作の現場では“要注意”でも“自粛”でもなく、“禁止”という強い言葉で、上から下へ伝え続けられたのでしょう。放送しても罰則はないのに、放送できないと思い込んでいたのは間違いだったと、ようやく気づいたんだと思います」

 その後、2012年のNHK紅白歌合戦で、美輪明宏が『ヨイトマケの唄』の歌詞を一切変えることなく、フルコーラスで歌い切り、その世界観と圧倒的な歌唱力が絶賛された。

「いい歌は流れるべきだと思っていますから、本当によかったと思います。ただ、個人的には『何をいまさら、もっと昔から流すべきだった』とも思いますが」と、とうじ魔さんは振り返る。

関連キーワード

関連記事

トピックス

復興状況を視察されるため、石川県をご訪問(2025年5月18日、撮影/JMPA)
《初の被災地ご訪問》天皇皇后両陛下を見て育った愛子さまが受け継がれた「被災地に心を寄せ続ける」  上皇ご夫妻から続く“膝をつきながら励ます姿”
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン
武蔵野陵を参拝された佳子さま(2025年5月、東京・八王子市。撮影/JMPA)
《ブラジルご訪問を前に》佳子さまが武蔵野陵をグレードレスでご参拝 「旅立ち」や「節目」に寄り添ってきた一着をお召しに 
NEWSポストセブン
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
オンラインカジノの件で書類送検されたオコエ瑠偉(左/時事通信フォト)と増田大輝
《巨人オンラインカジノ問題》オコエ瑠偉は二軍転落で増田大輝は一軍帯同…巨人OB広岡達朗氏は憤り「厳しい処分にしてもらいたかった。チーム事情など関係ない」
週刊ポスト
1990年代にグラビアアイドルとしてデビューし、タレント・山田まりや(事務所提供)
《山田まりやが明かした夫との別居》「息子のために、パパとママがお互い前向きでいられるように…」模索し続ける「新しい家族の形」
NEWSポストセブン
新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
《代表選手によるボイコット騒動の真相》新体操「フェアリージャパン」強化本部長がパワハラ指導で厳重注意 男性トレーナーによるセクハラ疑惑も
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
国技館
「溜席の着物美人」が相撲ブームで変わりゆく観戦風景をどう見るか語った 「贔屓力士の応援ではなく、勝った力士への拍手を」「相撲観戦には着物姿が一番相応しい」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【20歳の女子大生を15時間300万円で…】男1人に美女が複数…「レーサム」元会長の“薬漬けパーティ”の実態 ラグジュアリーホテルに呼び出され「裸になれ」 〈田中剛、奥本美穂両容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
前田亜季と2歳年上の姉・前田愛
《日曜劇場『キャスター』出演》不惑を迎える“元チャイドル”前田亜季が姉・前田愛と「会う度にケンカ」の不仲だった過去
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
NEWSポストセブン