栗山巧選手(時事通信フォト)
5月8日には通算1500奪三振を記録。スポーツニュースで「50歳までできますよ。やってください」と珍しく絶賛した野球評論家・江本孟紀氏が語る。
「50歳はちょっと言い過ぎましたが、球のキレもいいし、まだまだできると思います。ただ、ベテランが頑張っている背景には若手とベテランの中間の30歳前後がイマイチだからという事情もある。ケガも多いし、調整不足が目立つ。緊張感が足りないんじゃないですかね。
その点、ベテランで残っているのは体が丈夫な選手ばかりですからね。40歳まで現役を続けようというのは、技術は別として、体が強い、故障しないのが取り柄。もちろん長年の経験で不調の時でもごまかしもきく。監督も安心できるんですよ」
置かれた場所で咲けるか
パ・リーグもベテランが奮闘している。開幕早々、山川穂高(29)、外崎修汰(28)ら主力野手が戦線離脱した西武は、中村剛也と栗山巧の37歳コンビが3番、4番に座り「山賊打線」を牽引する。
王者・ソフトバンクでも松田宣浩(38)が元気だ。昨年は打撃不振が続き、連続試合出場も止まったが、今年は勝負所での殊勲打が目立ち、競争激しい三塁のレギュラーを守っている。
若返りを図る球界でアラフォー選手の立ち位置は厳しい。チャンスで活躍できなければ「引退しろ」と批判され、並の成績では「若手に機会を与えろ」となる。圧倒的な成績を残さなければ、レギュラーは任されない。彼らの強さはどこにあるのか。西武、楽天、ソフトバンクなどで投手コーチを務めた杉本正氏が語る。
「キャリア15年を超えるほどのベテランになると、自らの危機感を抱きながらも、冷静でいられます。“置かれた環境でできること”という目標が彼らの原動力になっている。栗山は2000本安打という明確な目標があるし、松田も今年はレギュラー死守を目指している」
40歳で44本塁打を打ち、“元祖・中年の星”と呼ばれた門田博光氏は「僕自身はベテランという意識はなく、ただガムシャラにやっていただけ」と前置きした上で、彼らにエールを送る。
「どのチームも疲れや暑さで6月下旬から苦しくなる。とくに本拠地がドームではない球団はより厳しくなるので、そこにピークを持っていくような考え方でもいいと思う。そこで活躍すれば首脳陣も“まだ必要だ”という判断になる。
一番ダメなのは試合に出られず腐っちゃうことですね。人間だから感情があるが、試合中は常に準備をしておく。椅子に座って試合を眺めていてはダメ。それがプロの仕事だと思います」
西武の松坂大輔(40)や内海哲也(39)、中日・福留孝介(44)など崖っぷちの選手も多い。“中年の星”としてもう一度輝けるか。
※週刊ポスト2021年5月28日号