ミルクボーイは「古いけど新鮮」だった(時事)
その後、地上波テレビのライバルはBSだけではなくなった。YouTubeなどのネット動画やNetflixなどの有料動画配信サービスが爆発的に普及し、テレビ業界のなかだけで視聴率を奪い合っていればいい時代は終わった。そうした時代の到来を予期していたかのような言葉だった。
漫才ブームの仕掛け人でもあった澤田さんは、お笑い芸人についても自身の知見から発言することが多かった。「第7世代」ブームや近年ブレイクした漫才師については、昨年5月にこんな言い方をしていた。
「漫才のルーツを辿ると、大正から昭和初期に初めて漫才の看板を掲げた『日本チャップリン・梅廼家ウグイス』という夫婦漫才師がいました。もともとはイタリア映画に由来する芸名だったが、米国からチャップリン映画が入ってくると、時流に乗って芸名を変えて成功している。そうした歴史を考えれば、若手芸人が時流に乗っていくために新しいネーミングである『第7世代』を名乗るのは正しい考え方だと思う。
(2019年に)M1で優勝したミルクボーイが出てきましたが、あれは昔からあるネタのパターン。ただ、久しぶりに聞くと新鮮。最近は明確でなかったボケとツッコミの面白さを見せてくれた。(同じパターンを)繰り返しやるのはダサいとされていたが、ミルクボーイは見事にやってのけた。ただ、これをみんなが追いかけると飽きられる。今の漫才の難しさですね」
常にテレビ界とお笑い界を気に懸けていた先人が失われた。その言葉を改めて噛みしめたい。
■文/鵜飼克郎