遺族の気持ちを考えれば、故人が気を使えば使うほど、遺言のとおりにすることは気が引けてしまうというのはよくわかる。そこまで子供のことを考えてくれた親を、本当は希望しているわけでもないのに散骨してしまうことにはためらいがあって当然だ。一方通行の思いやりは、かえって禍根を残すと考えるべきなのだ。吉川氏が続ける。
「ご自身は墓は不要だと思っていても、残される側は違う考えかもしれません。『父は亡くなったが、お墓に行けば偲ぶことができる』といった思いで、お墓を建てたいという子供は多いでしょう。遺族は必ずしも弔いを迷惑とは感じていないかもしれないのです。また、子供は普段から話していて納得していたとしても、兄弟や友人は『散骨ではちょっと寂しい』と感じるかもしれません。そうした周囲の気持ちを幅広く汲み取り、それでも散骨したいのであれば、その理由をしっかり納得してもらえるように説明することが大切です。
お墓は自分が入るためだけのものではなくて、残された人たちが故人を偲び、さらに次の世代まで、どうやって先祖を弔っていくか伝える場でもあります。そこまで考えたうえで判断すべきことなのです」
本当に子供のことを思うなら、まずは子供の意見を聞いてしっかり話し合うことから始めるのがいいだろう。