日本でも大麻由来の医薬品の使用が“解禁”される見通しとなった。5月14日に開かれた厚労省「大麻等の薬物対策のあり方検討会」では、従来の規制を見直すとりまとめ案が提示された。
「現在、米国など諸外国では末期がん患者の緩和ケアや難治性のてんかん治療のため、大麻草を原料にした医薬品の使用を認めています。日本では大麻取締法で禁止されていましたが、今回の見直し案により、医療現場での使用が認められる方向です」(全国紙社会部記者)
これまで日本の緩和ケアの現場では主にモルヒネが使用されてきたが、医療用大麻解禁派が訴えてきたのは、末期がん患者が痛みに苦しんでいる現実だ。NPO「医療大麻を考える会」代表の前田耕一氏が指摘する。
「モルヒネは末期がんの疼痛や神経障害性疼痛に対して有効性が低いことが知られています。医療用大麻は、そうしたモルヒネが効きにくい患者の痛みを緩和する効果があるんです。
日本では亡くなるがん患者のうち、2~3割は激痛に苦しんでいると言われる。大麻の医療使用と合法化で、そうした患者が痛みで苦しまない最期を迎えられるなら、患者のQOL(生活の質)の観点からも大きな意義があります」
緩和ケアだけでなく、がんの「治療」に効果があるという研究もある。医療用大麻の研究や啓発活動を行なう「GREEN ZONE JAPAN」代表で内科医の正高佑志氏が語る。
「海外では、試験管の中でがん細胞に医療用大麻の成分であるカンナビジオール(CBD)を投与することでがん細胞が死んだとの報告や、がん患者にCBDを投与したら寿命が延びたという報告もあります」
日本も諸外国に続くかたちで解禁へ踏み切ったが、正高氏は、「今回の案は十分ではない」と指摘する。
「今回の見直し案によって輸入や製造が可能になるのは、大麻由来成分のうちCBDを含む製品です。THC(デルタ・ナイン・テトラヒドロカンナビノール)を含む製品は、精神作用や乱用性があるとして今後も引き続き規制の対象となります。
しかし海外の多くの国はTHCの有用性を認めており、一定の規制を設けた上で合法的に使用可能となっています。THCにはCBD以上の医療効果があるとの研究報告もあり、今後は日本でも海外並みにTHCの含有を認めることが望まれます」
強すぎる幻覚作用
解禁派がさらなる規制緩和を求める一方で、決定に反対する人もいる。『〈麻薬〉のすべて』(講談社現代新書)の著者で日本薬科大学教授の船山信次氏がリスクについて解説する。
「大麻の成分の中のTHCには、幻覚作用や妄想などの精神作用があることを常に念頭に入れなくてはなりません」