芸能

ネタ出しなしのサプライズ 柳家さん喬と柳家権太楼『百年目』

柳家さん喬と柳家権太楼の『百年目』聴き比べが実現

柳家さん喬と柳家権太楼の『百年目』聴き比べが実現(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、柳家さん喬と柳家権太楼の『百年目』聴き比べが実現したサプライズについてお届けする。

 * * *
 4月、国立小劇場での「陽春四景」で柳家さん喬と柳家権太楼の『百年目』聴き比べが実現した。

「陽春四景」は上・下の2回公演で、7日の「上」はさん喬、権太楼、兼好、萬橘が出演。さん喬がトリで『百年目』を演じた。一方、12日の「下」の出演者は権太楼、市馬、白酒、一之輔。トリの権太楼が『百年目』に入った時には驚いた。ネタ出しはなく完全にサプライズ。主催者のリクエストだという。

 さん喬は向島の花見で幇間が「七段目の一力茶屋の趣向で落ちを取りましょう」と番頭を煽る。舟から陸へ上がると三味線が入り、由良之助気取りで芸者たちを追いかける番頭の描写が実に楽しそうだ。そこに出くわした旦那は翌朝、番頭を呼びだすと“栴檀と南縁草”の譬え話から入り、出来の悪かった小僧時代の番頭の思い出をしみじみ語ってから、たっぷり間を置いておもむろに「昨日の向島は楽しかったね」と切り出し、番頭を大いに慌てさせる。

「一晩中、帳面を見ました。見ているうちに私は、嬉しくて嬉しくて涙が止まらなかった。お灸を据えられて『熱い、熱い』と泣いた子が、立派な商人になった。店を任せて本当に良かった」。涙ぐむ旦那。「来年には必ず店を持ってもらいます。それまで店をお願いしますよ」。それを聞いて番頭は号泣する。

 権太楼の『百年目』は、派手に遊ぶ番頭を目撃した旦那が「大変なものを見た。ここで会うわけにはいかない」と逃げようとするのが印象的だ。この時点で番頭は一年後に暖簾分けが決まっており、「あと一年だったのに……」と悔やむ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
今回の地震で道路の陥没に巻き込まれた軽自動車(青森県東北町。写真/共同通信社)
【青森県東方沖でM7.5の地震】運用開始以来初の“後発地震注意情報”発表「1週間以内にM7を超える地震の発生確率」が平常時0.1%から1%に 冬の大地震に備えるためにすべきこと 
女性セブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト