芸能

映画に学ぶ辞世の言葉 『父と暮らせば』『天国までの百マイル』ほか

日本映画のじわりと染み入る「辞世の言葉」を紹介。写真は『痛くない死に方』(2021年、渋谷プロダクション)/(C)「痛くない死に方」製作委員会

日本映画のじわりと染み入る「辞世の言葉」を紹介。写真は『痛くない死に方』(2021年、渋谷プロダクション)/(C)「痛くない死に方」製作委員会

 死の間際に残す言葉には、その人の人生が凝縮して現われるという。銀幕の世界では、戦争や任侠などの華々しい死ばかりでなく、認知症や闘病生活の末の、一般的な暮らしの中にある死が描かれることも決して少なくはない。

 しかし、映画の中で最後の別れの言葉に「名言」とされるセリフはあまり見当たらないと話すのが、映画評論家の寺脇研氏だ。

「洋画では『愛している』という言葉がよく使われます。しかし、日本ではどんなに家族や恋人を大切に想っていても『愛している』はめったに使いません。言葉ではなく、まなざしや仕草などで伝える以心伝心のような描写が日本映画には多いのです」(寺脇氏)

 ストレートではない分、「心にじわりと染み入るセリフが多いのが日本映画なのです」と言う。いずれ誰もが迎える「死」。あなたなら、どんな言葉を残したいと思うだろうか。寺脇氏が、数ある映画の中から心にじわりと染み入る「辞世の言葉」を紹介する。

「一度だけ 浮気しました 許せ妻」

『痛くない死に方』(2021年、渋谷プロダクション)より
監督:高橋伴明 出演:柄本佑、余貴美子、宇崎竜童

【あらすじ】在宅医師の河田仁(柄本佑)は、判断ミスから末期がん患者を苦しみながら死なせてしまったことで自分を責める。その2年後、河田は再び末期がん患者の本多彰(宇崎竜童)を担当することになった。

「自分の意思を尊重できる最期を在宅医とともに求めていく物語。最期に残した俳句には、口では言えない、飾りっ気のない自分が表現されています。それを『知ってましたよ』と笑って許せる奥さんも素敵です」(寺脇氏)

「人間のかなしかったこと、たのしかったこと、それを伝えるんがおまいの仕事じゃろうが」

『父と暮せば』(2004年、パル企画)/(C)2004「父と暮せば」パートナーズ

『父と暮せば』(2004年、パル企画)/(C)2004「父と暮せば」パートナーズ

『父と暮せば』(2004年、パル企画)より
監督:黒木和雄 原作:井上ひさし 出演:宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信

【あらすじ】昭和23年の広島。図書館で働く美津江(宮沢りえ)は、原爆から生き残ったことに負い目を感じていた。そこへ原爆で死んだはずの父・竹造(原田芳雄)が魂となって現われ、娘を癒やし、前向きに生きさせようと語りかける。

「原爆は一瞬で多くの命を奪い去った。最期の言葉を残す時間すらなかった人たちにとって、この言葉は今を生きる人たちに、そして自分の子や孫、ひ孫にまで伝えたい言葉でもあると思います」(寺脇氏)

関連記事

トピックス

「ミスタープロ野球」として広く国民に親しまれた長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
《“ミスター”長嶋茂雄さん逝去》次女・三奈が小走りで…看病で見せていた“父娘の絆”「楽しそうにしている父を見るのが私はすごくうれしくて」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ犯から殺人犯に》「生きてたら、こっちの主張もせんと」八田與一容疑者の祖父が明かしていた”事件当日の様子”「コロナ後遺症でうまく動けず…」
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「本人にとって大事な時期だから…」中居正広氏の実兄が明かした“愛する弟との現在のやりとり”《フジテレビ問題で反撃》
NEWSポストセブン
デフサッカー男子日本代表が異例の活動中止に…(時事通信フォト)
【デフリンピック半年前の騒動】デフサッカー男子日本代表が異例の活動中止「監督は聴覚障害に理解があるはずでしたが……」 ろう者サッカー協会が調査へ
NEWSポストセブン
長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督からのメッセージ(時事通信フォト)
《長嶋茂雄さんが89歳で逝去》20年に及んだ壮絶リハビリ生活、亡き妻との出会いの場で聖火ランナーを務め「最高の人生」に
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「兄として、あれが本当にあったことだとは思えない」中居正広氏の“捨て身の反撃”に実兄が抱く「想い」と、“雲隠れ状態”の中居氏を繋ぐ「家族の絆」
NEWSポストセブン
今年3月、日本支社を設立していたカニエ・ウェスト(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストが日本支社を設立していた》妻の“ほぼ丸出し”スペイン観光に地元住人が恐怖…来日時に“ギリギリ”を攻める可能性
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《子どもの性別は明かさず》小室眞子さんの第一子出産に宮内庁は“類例を見ない発表”、守谷絢子さんとの差は 辛酸なめ子氏「合意を得るためのやり取りに時間がかかったのでは」
NEWSポストセブン
現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
六代目山口組の新人事、SNSに流れた「序列情報」 いまだ消えない「名誉職」に就任した幹部 による「院政説」
NEWSポストセブン
元女子バレーボール日本代表の木村沙織(Instagramより)
《“水着姿”公開の自由奔放なSNSで話題》結婚9年目の夫とラブラブ生活の元バレーボール選手の木村沙織、新ビジネスも好調「愛息とのランチに同行した身長20センチ差妹」の家族愛
NEWSポストセブン
宮城野親方
何が元横綱・白鵬を「退職」に追い込んだのか 一門内の親しい親方からも距離置かれ、協会内で孤立 「八角理事長は“辞めたい者は辞めればいい”で退職届受理の方向へ」
NEWSポストセブン