交際2年の彼氏、米ラッパーのコーデー(写真右/アフロ)
うつ病を告白した本当の理由
大坂選手の言動がスポーツ界だけでなく世界中から注目を浴びたのは、今回が初めてではない。人種差別抗議運動を象徴する「Black Lives Matter(BLM)」に強い姿勢を示したことがきっかけだった。
昨年8月、米ウィスコンシン州で起きた警察官による黒人男性銃撃事件に抗議するため、大坂選手は出場予定だった「ウエスタン・アンド・サザン・オープン」の準決勝を棄権する意思を表明した。続く全米オープンでは、7名の犠牲者の名前を書いたマスクを毎試合着用したことでも話題を呼び、注目のなか見事に優勝を果たしている。
「一連の抗議活動の際、彼女は『私はアスリートである前に黒人女性』と発言。応援の声が上がる一方で、『スポーツに政治を持ち込むな』や『黒人なら日本人ではない』などの誹謗中傷もありました。
日本からの差別的な声もあったが、彼女は毅然としていた。BLM以降は、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(当時)の女性差別的な発言に関する質問などに対しても“無知から生じた発言だと思う”などと、はっきりと自分の考えを述べています」(山口さん)
だが、彼女のこうした強気な言動は、繊細で内向的な自分を隠すためだったのかもしれない。5月31日、大坂選手は全仏オープンの2回戦の棄権を発表した。そして、自身のTwitterで一連の発言をこう弁明した。
《私は2018年の全米オープン以降、長い間うつ病に悩まされ、その対処に本当に苦労してきました。私は人前で話すのが得意ではなく、世界中のメディアに向かって話す前に大きな不安に襲われて緊張してしまいます。このパリの地で、すでに私は弱気になっており、不安を感じていたので自己管理をして記者会見を欠席したほうがよいと考えました》
さらに、大会主催者に謝罪の手紙を書いたことも明かした。トップアスリートが一転、心の病を告白したことで、再び世間は揺れているが、なぜ彼女はあのような発言をしたのだろうか。
山口さんが注目しているのは、5月が米国の「メンタルヘルス啓発月間」だったことだ。
「過去には雑誌『ELLE』でセレブが過去のうつ経験をカミングアウトしていて、大坂選手が大好きなビヨンセも自身のことを話しています。全仏前にナーバスになっているなか、なんらかのアクションを起こしたかったのかもしれません」(山口さん)
いまでこそ、オピニオンリーダーとしての地位を確立し、女子アスリートとしては60億円という世界一の年収を誇るが、ここまでの道のりは険しかった。ハイチ系アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれた大坂選手は米国内でマイノリティーとして育ってきた。
「彼女がテニス選手として頭角を現してきた10代前半頃、インターネットでは『大坂はブラジアン』という書き込みがあふれていました。『ブラジアン』とは、ブラックとアジアンを合わせた差別用語。彼女はずっと『私は黒人で日本人』と言っていましたが、記者会見でも人種や国籍を問われることが多く、やがて『私は私……』と答えるようになっていました。
テニス界は白人中心の世界ですから、彼女がトッププレーヤーでも誹謗中傷の的になり続けた」(別のテニス関係者)