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日本民藝館【1】手形が刻まれた湯釜を見た壇蜜「遊び心が憎いですね」

『手押文湯釜』江戸時代・18世紀 両手で湯釜を持ち上げた様子を連想させるように対の手形が刻まれている

『手押文湯釜』江戸時代・18世紀 両手で湯釜を持ち上げた様子を連想させるように対の手形が刻まれている

 日本美術応援団団長である美術史家・明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・目黒区の日本民藝館の第1回。2人が日常の身近な工芸品を見て回る。

壇蜜:湯釜に手形だ、かわいい! 手の大きさから察するに大人の仕業ですね。

山下:湯釜を触っちゃって“アチチ~!”って。

壇蜜:その名も『手押文湯釜』とは遊び心が憎いですね。日本民藝館では湯釜や囲炉裏で使う自在掛、お皿など工芸品も多く展示されています。竹の掛花入はわが家でも庭の水仙を差していたなぁ、なんて思い出して親しみを感じました。

山下:そうしたどの家にもあるようなものに美を見出したのが、日本民藝館を創設した柳宗悦です。飾って鑑賞する芸術品ではなく日常の身近な工芸品へ目を向け、使いながら変わりゆく様も丸ごと慈しみました。

壇蜜:経年の消耗も風合いとして愛でたのですね。

山下:柳は日本各地で神仏像を刻んだ木喰明満の「木喰仏」も見出しました。庶民信仰の小さな社寺に遺され、民衆に寄り添う木喰仏も柳の眼には“生活の中の美”と映ったのでしょう。

壇蜜:なんてほのぼのとした、ふくよかな微笑み。

山下:微笑仏とも呼ばれます。柳は大正13年に木喰仏と出会い一目で惚れ込みますが、価値はおろか、当時は木喰明満の存在すら知られていませんでした。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長。

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)。

●日本民藝館
【開館時間】10時~17時(最終入館は閉館30分前まで)
【休館日】月曜(祝日の場合は開館し、翌平日が休館)、年末年始、その他臨時休館あり/西館(旧柳宗悦邸)公開日会期中の第2水曜・土曜、第3水曜・土曜(10時~16時半、最終入館は閉館30分前まで)
【入館料】一般1200円
【住所】東京都目黒区駒場4-3-33 ※開館情報はHPにて要確認

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年6月11日号

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