ライフ

「運動会は中止なのに五輪はやるの?」子供の問いにどう答えればよかったのか

2021年の運動会はほとんどの競技が中止された縮小開催だった(イメージ)

2021年の運動会はほとんどの競技が中止された縮小開催だった(イメージ)

 正直者が馬鹿を見る、とは、悪賢い者がうまく立ち回って得をする一方で正直者がひどい目にあうことをあらわす慣用句だが、遠足も修学旅行も運動会も中止になった子供たちは、そんな気持ちなのかもしれない。ライターの森鷹久氏が、2021年のいま、大人たちが、子供の素朴な問いかけに窮するのはどんなときなのかについてレポートする。

 * * *
 新型コロナウイルスの感染者数はここにきて横ばいに落ち着き、世論の耳目は「東京五輪」が本当に開催されるのかということに向いているようにも思える。だが、そんな世情を見た子供達が、素朴な疑問を親たちにぶつけてきて、親たちは答えに詰まり途方にくれているというのだ。

「子供が楽しみにしていた最後の運動会も、リレーなどほとんどの種目は中止で、学年ごとにたった1時間だけダンスと体操をして終わりました。残念がる子供が自宅に帰ったところ、テレビニュースで『東京五輪は開催する』と出演者の方が仰っていたんです。それを見た子供から、運動会は出来ないのにオリンピックはなぜやるのかと聞かれて、押し黙るしかありませんでした」

 悲しげな様子で筆者に打ち明けてくれたのは、千葉県内在住の会社員・富永英子さん(仮名・40代)。小学6年の息子は、去年の運動会もコロナ対策での「時短開催」だったため、小学校最後の運動会では「絶対にリレーで一番になる」と鼻息も荒かった。だが結局、今年の運動会も時短で縮小開催になってしまった。落ち込んでいた息子が、より感染の危険が高そうなオリンピックだけがなぜか「開催される」ことに疑問を持つのも当然だ。

「それ以前にも、子供はなるべく外に出ちゃいけない、と教えていたところ、テレビ画面にはマスク姿で旅行をする芸能人の姿が出てきたんです。子供の行事はほとんど中止になり、公園へ遊びに行くのも恐る恐る、という時期でした。とくに説明を求められることもなかったのですが、芸能人などの『えらい人』は外に出ても大丈夫なんだ、なんて自分を無理やり納得させているようでした。色々と考え込んでいるらしいのが分かっていたのに、親としてかける言葉すら見つからず、情けない思いをしました」(富永さん)

 関東南部の公立小学校勤務・高田孝俊さん(仮名・20代)もやはり、子供たちに「コロナ禍の矛盾」を突きつけられて窮してしまったと訴える。

「昨年の6年生の修学旅行中止が決まったあと、親御さんは出張で遠くに行っている、なんて話をある生徒がしはじめました。それをきっかけに、大人はよくて、どうして修学旅行はダメなんだという雰囲気になってしまって、お仕事なんだから仕方がないよ、と苦し紛れの説明をしましたが、子供たちは納得がいっていない様子でした」(高田さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

お笑いトリオ「ジャングルポケット」の元メンバー・斉藤慎二。東京地検が不同意性交と不同意わいせつの罪で在宅起訴したことがわかった
《ジャンポケ斉藤が不同意性交罪で起訴》20代女性との“示談交渉”が決裂した背景…現在は“表舞台に戻れない”と芸能以外の仕事に従事
NEWSポストセブン
亡くなる前日、救急車がマンションに……
《遺骨やお墓の場所もわからない…》萩原健一さん七回忌に実兄は「写真に手をあわせるだけです」明かした“弟との最期の会話”
NEWSポストセブン
3月24日午後4時半すぎに事件は起きた
《高齢ドライバー事故》あんたが轢いたのは人間やで!」直後に一喝された古橋昭彦容疑者(78)は呆然とうなだれた…過去にも「気づいたら事故」と供述【浜松・小学生姉妹死傷】
NEWSポストセブン
試合後はチームメートの元を離れ、別行動をとっていた大谷翔平(写真/アフロ)
【大谷翔平、凱旋帰国の一部始終】チーム拠点の高級ホテルではなく“東京の隠れ家”タワマンに滞在 両親との水入らずの時間を過ごしたか 
女性セブン
「MEDIA IS NOT GOOD」とは、“パンクの女王”と呼ばれたアメリカの詩人でミュージシャンのパティ・スミスが発信したメッセージ
《KAT-TUN解散》亀梨和也の「4万円メッセージ入り白Yシャツ」に込められた“不退転の覚悟”
NEWSポストセブン
いよいよ開幕迫るプロ野球。3年連続最下位の中日ドラゴンズは汚名挽回なるか(*credit)
【日中問題の専門家が語る“中日愛”】名手でもファン投票でオールスター落選…ドラファンならとっくに知っている「民主主義の残酷さ」
NEWSポストセブン
すき家の対応の「マズさ」とは(時事通信フォト、写真は東京都港区の店舗)
「ネズミと虫とはワケが違う」「なぜ公表が2か月後だったのか」すき家で“味噌汁にネズミ混入”、専門家が指摘する「過去の前例」と「対応のマズさ」
NEWSポストセブン
Number_iのメンバーとの“絆”を感じさせた永瀬廉
キンプリ永瀬廉、ライブで登場した“シマエナガ”グッズに込められたNumber_iとの絆 別のグループで活動していても、ともに変わらない「世界へ」という思い 
女性セブン
破局していたことがわかった広瀬(時事通信フォト)
《女優・広瀬すずと交際相手が破局》金色ペアリング熱愛報道も…昨年末に「薬指のリング」は“もうつけない”の異変
NEWSポストセブン
“スーパーサラリーマン清水”と“牛飼”の関係とは──。
成金トクリュウ“牛飼” 斎藤大器容疑者(33)と“スーパーサラリーマン清水” 清水謙行容疑者(49)の“意外な繋がり”「牛飼に近い人物が関西に“点検商法”を持ち込んだ」
NEWSポストセブン
春の園遊会では別の道を歩かれる雅子さまと紀子さま(2024年10月、東京・港区。撮影/JMPA) 
春の園遊会が60年ぶりの大改革 両陛下、秋篠宮ご夫妻、愛子さま、佳子さまが3組に分かれ“皇族方の渋滞”を解消、“じっくりご歓談”“待ち時間短縮”の一石二鳥 
女性セブン
プロデューサーとして本作のスタッフィングなどに尽力したシンエイ動画の佐藤大真さん
『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』プロデューサーが明かす「王道」を意識した「敵キャラ」の魅力
NEWSポストセブン