和歌山カレー事件で有罪となった林眞須美死刑囚(59才)の長女と4才の孫が飛び降り死する事件が発生した。また、16才の孫も自宅で亡くなっていた。家族に何があったのか──。
1998年7月25日、和歌山市内の新興住宅地では、自治会が主催する夏祭りが予定されていた。そこで提供されたカレーを食べた人が、1人また1人と嘔吐する。腹痛や吐き気に襲われた人は合計67人。そのうち、自治会長や10才の子供を含む4人が死亡した。これが世に言う「和歌山カレー事件」だ。小さなコミュニティーで起きた無差別的な凶行は、当時センセーショナルに報じられた。当初は食中毒も疑われたが、ヒ素中毒であることが明らかになり、事件から約2か月半後に林眞須美死刑囚が逮捕された。
その事件発生から23年目の6月、一家を新たな悲劇が襲った。6月9日、大阪府泉佐野市と沖合にある関西国際空港を結ぶ関空連絡橋から女性と女児が飛び降り、約40分後に37才の女性と4才の女児がうつ伏せで浮いているのが発見された。37才の女性・久美さん(仮名)は、眞須美死刑囚の長女であることが判明。4才の女児は久美さんの次女だった。久美さんが無理心中を図ったものと見られている。
その直前、久美さんは自宅から「娘の意識がない!」と119番通報していた。救急隊が到着すると、久美さんの長女の鶴崎心桜(こころ)さん(享年16)が亡くなっていた。死因は外傷性ショックで、日常的に虐待を受けていた疑いが持たれている。
離れても家族が大事
マスコミの耳目を集めたことで、平成という時代の記憶として深く刻まれる和歌山カレー事件。眞須美死刑囚は今どうしているのか。
「その後、いまに至るまで一貫してカレー事件への関与を眞須美死刑囚は否定しています。検察の主張が状況証拠ばかりだと批判が集まり、冤罪を疑う声は、いまに至るまで根強い」(地元メディア関係者)
そういった声が風向きを変えたのか、5月31日、眞須美死刑囚の再審請求が和歌山地裁に受理された。ただし、夏祭りに参加し、ヒ素入りカレーを実際に食べた70代の女性は、眞須美死刑囚の犯行だと信じて疑わない。
「早くこの事件を一区切りさせてほしいですわ。なんであんなことしたんという怒りの気持ちでいっぱいです」
当時の林家を知る人物は、カレー事件当時の長女・久美さんのことをこう話す。
「思春期ということもあって、あの頃はちょうど反抗期でした。年子の妹がいましてね。愛情が2人の妹と1人の弟にすべて注がれていると感じ、特に母親に反抗的な態度を取っていたように思います」
しかし、両親の逮捕後、妹や弟の面倒を、親代わりとなって見たのも久美さんだった。
「4人は同じ施設に引き取られたのですが、その頃は、職員や同居する子供たちからの嫌がらせや暴力もあったそうです。でも、そのときにも久美さんは気丈に振る舞い、時にきょうだいを守ったりもしました。頭もよくて、看護師になるのが夢でしたね」(前出・林家を知る人物)
しかし、なじめなかった高校を中退したこともあって、その夢からは遠ざかる。その後、施設を飛び出し大阪で働き始めた。