田辺氏が続ける。
「そうした実力はギャルモデルとして知られていたキャリア初期から発揮されています。2009年の映画『山形スクリーム』ではチェーンソーを振り回すギャルという破天荒な役を演じましたが、不思議と違和感がありませんでした。転機となった2015年のNHK連続テレビ小説『あさが来た』では、“なめたらあかんぜよ”という台詞の言い回しや醸し出す雰囲気が、『鬼龍院花子の生涯』の夏目雅子さんを彷彿とさせるとSNSでも話題になりました。これは波瑠の“何者にもなれる”という持ち味を分かりやすく表しています。
役として、共感させる必要があればしっかり共感させ、嫌われなければならない役であれば徹底的に嫌わせることができる。作品や役の意図をくまなく表現し、自在性があり、鑑賞者を手のひらで転がすこともできる。そういった的確さを持った役者だと思います」
ドラマオタクを自称するエッセイストで編集者の小林久乃氏も、彼女の魅力をこう語る。
「波瑠さんの魅力は、“女から見てイライラする女”をドラマで演じても、最終回には視聴者を自分の世界に引きこんでしまうことだと思います。
例えば『あなたのことはそれほど』(TBS系)では、自分の意思をはっきり示さずにズルズルと不倫するという悪評の役でドラマ中盤まで進みましたが、一転して最終回付近では視聴者に共感されていました。『G線上のあなたと私』(同)でも年下男子と恋に落ちそうになりながら曖昧な態度を取っていましたけど、最終的には結ばれて“私もああいう風になりたい!”と思った視聴者が数多くいたはずです。去年の『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜』(日本テレビ系)では絶好調のカタブツ女性を演じていましたが、終盤ではちゃんと“可愛い!”と言われていました」