この大会ではジャパンの快進撃に熱狂すると同時に、多くの人がラグビーという競技そのものに深い感動を覚えたのではないか。ラグビーが感動を呼ぶ理由について藤島さんは、「一言でいうと、ラグビーは面白いんです」と笑顔で語る。
「日本大会を見た私の知り合いのサッカーを長く追ってきたライターは、『ラグビーは50点差で負けている選手が残り3分で必死にタックルすると感動する。勝負が決まっていても感動するところがサッカーとは違う』と言いました。ラグビーは試合の中に小さな試合がたくさんあって、走ってくる相手にタックルして倒したり、劣勢でもスクラムで一丸になったりする姿など、勝敗にかかわらずひとつひとつの場面に心が動かされます。日本大会では、競技の持つ面白さを最高の舞台で凝縮されたかたちで味わえたから、多くの人が深く感動したのだと思います」
新生ジャパンの戦力はいかに
最高の舞台で最高の相手と戦うジャパンの面々では、W杯で大活躍した主力とともに新戦力にも期待がかかる。
「今回は合流期間が短いのでトップリーグの上位チームで動きの良かった選手を中心にセレクトし、基本的にW杯の戦術を継続するようです。中でも海外でプレーする松島幸太朗(28)や姫野和樹(26)はワールドクラスの実力でジャパンを引っ張ってほしいし、トップリーグで調子を落とし気味だったキャプテンのリーチ・マイケル(32)はジャパンでよみがえるでしょう。日本大会で大活躍した福岡堅樹が引退したウイングのポジションは、新戦力の高橋汰地(25)とシオサイア・フィフィタ(22)に期待。同じく新戦力のベン・ガンター(23)は世界から注目される選手になる可能性があり、齋藤直人(23)も小柄ながら生命力みなぎる良い選手です」
ライオンズ戦はコロナが発生してから初となるジャパンのテストマッチだが、振り返れば日本のラグビーには、「戦後初のスポーツ競技」となった歴史がある。
終戦から1か月あまりの1945年9月23日、戦禍を免れた京都大学農学部のグランドで京都の旧制三高を母体とするチームと関西ラグビークラブの対戦が行われた。この史実を発掘した藤島さんによれば、戦後初の競技スポーツの試合とされるこの一戦には、告知なしで3000人の観客が集まり、その場にいた新聞社勤務の人は、「自由と平和が来たという喜びが雪解けの水のように奔流したようであった」と書き残したという。