ライフ

米長邦雄氏から先崎学氏へ「苦しい時ほど笑わなきゃいかん」

米長邦雄氏からの訓示とは?(右から米長氏、先崎学氏、中川大輔氏)

米長邦雄氏からの訓示とは?(右から米長氏、先崎学氏、中川大輔氏)

 1980年、水戸に住んでいた先崎学氏は将棋界のトップ棋士だった米長邦雄氏に師事。小学校4年生から6年生までの3年間、東京・中野の米長宅で内弟子として過ごした。先崎氏が師との思い出について振り返る。

 * * *
 小3の終わり頃に米長先生のお宅に連れていかれました。その時、先生に「よかったら、ずっとここにいてもいいんだよ」と言われ、夢のような気がして、すぐに「はい、いたいです!」と答えました。先に内弟子になっていたのが、小6で女流アマ名人戦に優勝した林葉直子さんでした。

 昔は地方出身の才能ある若者が親元を離れ、東京や大阪に出てきて、師匠宅で内弟子になった。私や林葉さんはその最後の世代です。私はまだ小4で世間知らずもいいところ。入門翌朝、寝転がっている師匠をまたぎ「馬鹿もん!」と雷が落ちました。よく「破門だ」と叱られましたが、いま思えば先生はそんなに厳しくなかった。大変かわいがっていただきました。

 先生の教えは「勢いのある将棋を指せ」です。これを内弟子の3年の間に何百回言われたか。「元気がない将棋を指しちゃいけない」と。先生は人間の「気」というか、目に見えないところを重視されていたんです。先生の対局の棋譜を並べてみると、緩んでいる駒がなく、盤上全体にハリがありました。

〈内弟子の林葉や先崎が巣立ってからも、米長氏は第一線で活躍し、1993年には史上最年長(49歳11か月)で名人位を獲得。1987年にプロデビューした先崎氏も2000年に棋界トップ10にあたる順位戦A級への昇級を果たしている〉

 米長先生の勝負勘は独特でした。いまの若い人にはまったく理解されないかもしれませんが、身体が健康で締まっていて、気合が乗っていれば、その人には「勝負の神様が微笑んでくれる」と。対局中に顔が緩んでいるのが一番嫌いなんです。弟子の私は「最近のお前は指す時の顔がダメだ」と怒られたものです。

 たしかに、気合のぶつかり合いみたいなところは、将棋の本質なんだろうと思います。

 先生は常に将棋界をよくしたいと考えていました。羽生(善治)さんや私の世代は、そのマインドに影響を受けています。いまの若い人は羽生さんの姿を見て、何かを感じているかもしれません。

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン