トランスジェンダーであることは、アイデンティティの一つでしかないと語る
LGBTという言葉が一人歩きすることによって、事実とは異なるステレオタイプな見方が生まれてしまうこともある。こうした問題についてサリー楓は「トランスジェンダーだからといって泣ける話があるわけじゃない」と強調する。
「“LGBTらしさ”みたいなものを求められることが多々ありました。例えば自分がトランスジェンダーであることを打ち明けると“オネエタレント”のように扱われて、『なんか面白いことやってよ!』とか言われることもあります。エンタテインメントを求められたり、感動的なエピソードを期待されたりするんです。
でも実際にはトランスジェンダーだからといって必ずしも感動的な話があるわけじゃないんですよね。LGBTかどうかにかかわらず、わりと普通の生い立ちで普通に生きてきたので、ステレオタイプな見方をする人たちが思っているほどドラマチックなストーリーがあるわけではないんです。
テレビでのジェンダーをいじるような場面には違和感を覚えることもありますが、もちろん、芸能としての“オネエネタ”には仕方ないところもあるとは思います。それはその人たちの表現の仕方なので。けれど、それを芸能ではない社会一般にまで持ち込まれてしまうとつらいです。
トランスジェンダーというのは、私の中にたくさんあるアイデンティティのうちの一つでしかないんですよ。人間であり、日本人であり、福岡出身であり、建築家であり、トランスジェンダーである、というふうに。その中でも、トランスジェンダーに一番解決が必要な問題を感じているので、こうしてインタビューを受けたりしているんですね」(サリー楓)