数日前に買った鶏のささみを、ヤバいかな~と思いつつ調理して食べたら、1時間もしないうちに、周期的な激しい腹痛で体中が汗だく。
ペットボトルの水をあおりながら、身を二つ折りにしてうめくこと2時間。どど~んと大波の後、スーッと痛みが引いて、やっとベッドに戻れた。
で、朝起きて体温を測ったら34.9℃。低体温ってことは、免疫力が下がっているということ。これでワクチン接種なんかできるのか。体はなんとなくフラつくような気がするし、行くか、キャンセルするか、ずいぶん迷ったのよ。
だけど、起きてタクシーで接種会場に向かったら平熱に戻っていて、医師に前夜からの経緯を話すと、「鶏肉が原因の食中毒はけっこうキツいっすよね。ワクチン? 関係ないっス」と、こともなげに言うんだわ。松崎しげる並みに色黒のその医師からすれば笑いごとでも、ワクチンを打たれる方にしてみれば一大事よ。
で、意を決して袖をたくし上げて、息を詰めて左肩を差し出したら……アレッ、前夜の腹痛と比べたらなんてことない。新型コロナのワクチン注射は「ぶん殴られるような痛み」って聞いていたのに、ズーンと“重た痛い”だけ。
「はい、息を吐いて~」と注射針を刺した看護師さんに促され、「うう~っ!」とうめく。「いいですね~。上手、上手」と言われ、「うう~!」とボリュームをあげたら、「もう終わってますよ」だって。
問題の副反応だけど、「2回目は高熱が出るかも。ちなみに私は翌日、38℃の熱が出ました」と自分の体験を教えてくれた、かかりつけ医からカロナール(解熱鎮痛剤)を処方してもらい備えてたけど、全然。ただ、接種した日とその翌日は悪天候だったせいか、寝ても寝ても眠かったの。もっとも私の場合、もともとひどい気象病だから、そっちによる睡魔か、副反応なのか見分けがつかなかったんだけど。
それにしても、こんなドキドキの予防接種は、生まれてこのかた打ったことがなかったことは確か。そのぶん、終わった後、晴れやかな気持ちになったとまでは言わないけど、背中の荷物が少しだけ軽くなった気はするよ。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2021年7月22日号