そうしたしくみの違いによって、副反応のレベルが異なる可能性がある。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが指摘する。
「mRNAワクチンは遺伝子の設計図を打ち込み、免疫反応を生み出す『抗原』をその人の体内でつくらせます。その際、必要以上に抗原がつくられると、免疫反応が出やすく、副反応も強くなります。
一方の遺伝子組み換えたんぱく質ワクチンは、すでにできた抗原を投与するため、必要以上の抗原がつくられにくい。そのため、シオノギ製はファイザー製やモデルナ製よりも副反応が軽くなると考えられます」
「実績」もシオノギを後押しする。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが言う。
「mRNAワクチンは世界初の試みで、人体にどのような影響が出るかの評価は現時点で不透明です。一方の遺伝子組み換えたんぱく質ワクチンの技術は、これまでインフルエンザワクチンやB型肝炎ワクチンなど多くのワクチンで用いられており、臨床研究もしっかりされている。安全性の面ではmRNAワクチンよりも安心できるといえます」
ファイザー製やモデルナ製は欧米で治験を行ったが、シオノギ製は日本で治験が行われるという利点もある。
「日本でさらに治験が増えれば、日本人に即した有効性や危険性がより明らかになる可能性があります」(一石さん)
実際、ファイザー製のワクチンは日本人と欧米人の体格差を考慮せず、欧米での用量をそのまま投与しているという指摘がある。日本の成人女性の平均体重が50kgなのに対し、アメリカ人の成人男性の平均体重は90kg。体重当たりに換算すると、約2倍のワクチン量を打っていることになる。従来のワクチンならば問題にならないが、mRNAワクチンでは検証が不充分で体格差が副反応に影響を与えている可能性は否定できない。
若者にとってシオノギ製がいい理由
安全面だけでなく、「使い勝手のよさ」も魅力だ。
mRNAワクチンは低温での管理、輸送、保存が必要で、ファイザー製は氷点下70℃、モデルナ製は氷点下20℃で管理しなければならない。これはかなり困難で、各自治体では、冷凍庫の不調などでワクチンを廃棄せざるを得ないケースが多発している。
「しかし、遺伝子組み換えたんぱく質ワクチンなら2~8℃で保管でき、医療機関側のハードルが低くなります。このワクチンが登場すれば、かかりつけ医での接種の進展が期待できます」(室井さん)