「池松壮亮さんは『アジアの天使』でオダギリジョーさんと共にオール韓国ロケにチャレンジしました。その理由は“盟友・石井裕也監督の作品だから”というのが大きかったように思います。『ぼくたちの家族』『バンクーバーの朝日』『映画 夜空はいつでも最高密度の青空だ』『町田くんの世界』など、石井監督と池松さんは多くの映画を共に作り上げてきています。
『アジアの天使』においては、さまざまなアクシデントに見舞われ、脚本も何度も書き直すことになるなど相当苦心されたようですが、そんな石井監督を何年も傍らで支えていたのが池松さんです。“海外進出”が目的ではなく、信頼する監督と共に越境する、ということがやはり大きかったのではないでしょうか」(SYO氏)
では中国映画『柳川』や『1921(原題)』への出演はどんな意味を持つのだろうか。SYO氏が続ける。
「もちろん、中国映画『柳川』や『1921(原題)』に出演することで、今後はアジアをまたいだ活躍を見せていくであろうとは思います。ただ、近年急に動き出したり意識が変わったりしたわけではありません。彼の映画デビュー作は12歳のときに出演した『ラスト サムライ』です。当時から“日本”と“海外”の作品の違いについて考えていたといいます。
つまり、もともと国内に絞った考え方をする俳優ではないんです。2018年には、NHKの番組でフランスのフランソワ・オゾン監督と対談したこともあります。出演作が海外の映画祭に出品される機会も多く、国内の映画も海外の映画も彼にとっては“身近”な存在なのではないかと思います」
『1921(原題)』に関して語った『映画.com』の独占取材では、「僕自身、これまで沢山の中国映画から影響を受けてきました」と明かしていた池松壮亮。“海外進出”ではなく端的にグローバルに活躍する彼の動きは、コロナ禍で分断が加速化する今、多くの人にとって一つの指針となる生き方なのかもしれない。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)