プリンセス プリンセスは1990年に『OH YEAH!』と『ジュリアン』の2曲をリリースした
「イカ天」などのバンドブームが生んだ名曲たち
まず注目なのは、当時のバンドブームを牽引した通称『イカ天』からのヒット曲だ。
「毎週土曜深夜の東京・有楽町のスタジオにバンドが集まって生放送で競い合う、いまやありえない番組が『イカ天』でした。平成元年2月に始まったんですが、4月までのつなぎ番組だろう、くらいの軽い気持ちで引き受けたら、結局1990年末まで約2年続きました。わざわざライブハウスなどに行かなくても、新しいバンドが向こうからやってくる楽しい時間になりました。
純粋に音楽性で審査してほしいというオーディション番組としての方針が一貫していて、5週勝ち抜くとなれる“グランドイカ天キング”になった初代『FLYING KIDS』や、2代目『BEGIN』、3代目『たま』など、本当に優れたバンドを輩出できたと思います」(萩原さん)
なかでも「たま」は『さよなら人類』で異彩を放った。知久寿焼、石川浩司、滝本晃司、柳原幼一郎の4人組で、同曲は、柳原幼一郎の作詞・作曲だ。
「二重にも三重にも深読みできる奥行きのある詞で、リリースから30年近くたったいまも、ネットではさまざまな解釈が試みられています。
奇抜な風体に幻惑されて気づかなかった人も多いですが、メンバー全員が作曲やプロデュースができ、音楽性も高く、演奏家としても優れていた。そのことを、たまファンとして知られた竹中労さん(政界・芸能界に斬り込んだルポライターで評論家。1991年没)は著書『「たま」の本』の中で《きみたちはビートルズよりすごい》と指摘。たまの4人は《まさかァ》と答えています」(スージーさん)
また、『にちようび』をヒットさせた女性ボーカルのバンドJITTERIN’ JINNもイカ天出身だ。
「それまでは女だてらにとか男勝りでないと女の子がロックできない風潮がありましたが、『ダイアモンド』をヒットさせたプリンセス プリンセスは、女の子が普通にキュートにロックをやってもいいんだと知らしめました」(萩原さん)
これにLINDBERGなどの女性ボーカル中心のバンドが続いたのも、J-POPへの大きな転換点だった。
※女性セブン2021年7月29日・8月5日号