『サレタガワのブルー』(MBS・TBS系、火曜深夜)では、心底愛する妻に浮気をされてしまう田川暢(犬飼貴丈)がメインに。妻はいわゆるダブル不倫で、相手の男の妻と協力をすることに。この妻役は元乃木坂46の堀未央奈さんが演じているけれど、旦那も浮気相手も手玉に取って喜んでいる嫌な女がばっちりとハマっている。
『ただ離婚してないだけ』(テレビ東京系、水曜深夜)は、夫・柿野正隆(北山宏光)の不貞によって起きた事件を、妻の雪映(中村ゆり)も一緒に解決していく……というサスペンス。毎回、冒頭で不倫相手の殺害シーン(?)が出てくるので、夫婦で共犯ということになる。この作品は他に比べるとやや方向性が変わるけど、“される側”の妻が物語の主軸になっている。
こんなにも不倫ドラマが百花繚乱となっているのは、昨今の著名人による不倫騒動が背景にあると思う。2016年にベッキーが起こした“ゲス不倫”騒動を皮切りに、あまりにも不倫が身近なものになってしまった。
それまでの不倫はドラマだと、特別扱いのような風潮があった。ドラマの中だけのことであって、一般人には関係のない世界。そう思っていたのに、時代の変遷によって不倫が身近になっていく。「あの著名人がしているなら、私も」そんな空気が、不倫ドラマの豊作化を生んだ気がしてならないのだ。この原稿も私が過去の不倫に対するイメージを知らない若い世代だったら、書くことはなかったかもしれない。「あれ? 3作も不倫ドラマを放送している……?」という現象に気づくことはなかったはず。
これから不倫ドラマはどんな視点へと変わっていくのだろうか。青少年の健全な育成のためにも、なるべく刺激控えめでお願いしたい。
【プロフィール】こばやし・ひさの/静岡県浜松市出身のエッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター。これまでに企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊以上。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。