鼻水は「黄色」か「無色透明」か
重症化を防ぎ、周囲に感染を広めないために早期発見・早期治療が求められる。だが症状が酷似している夏風邪とデルタ株を、どう見極めればいいのだろうか。まず知っておきたいのが、鼻水の違いだ。東京歯科大学教授で医師の寺嶋毅さんが解説する。
「鼻水の色が黄色だったら『細菌感染による風邪』の可能性が高い。色がつくのは細菌の死骸や白血球が含まれるからです。一方のデルタ株はウイルス感染なので、無色透明のサラサラとした鼻水が出やすい。それは痰も同様で、粘り気があり色がついていたら夏風邪、無色だったらデルタ株の可能性が高い」
のどの腫れや咳も見分けるポイントになる。
「のどの奥を見たとき、扁桃腺が赤く腫れていたり、膿がついて白っぽくなっていれば、扁桃炎によるのどの風邪です。夏風邪の代表例ですね。また、風邪だと咳が出ても咳払い程度ですが、デルタ株の場合は肺の奥から吹き上がるような咳が、夜間から明け方にかけて続くという特徴もあります」(望月さん)
熱の上がり方にも違いがある。
「夏風邪でもデルタ株でも同じように微熱が出る場合が多く見られます。ただ、その際には市販の総合感冒薬をのんで安静にして、2、3日して症状がよくなったら夏風邪でしょう。なかなか微熱が治まらず、ほかの症状も出始めたらデルタ株を疑ってください。また、39℃近い熱が出たり、夜になると熱が上がるのはコロナの特徴的な症状。通常、夏風邪で39℃近い熱が出ることはありません」(望月さん)
梅雨明け以降、日本列島を猛暑が襲っている。倦怠感を夏バテだと思い、見逃すケースもある。
「デルタ株の大きな特徴は、体に強い倦怠感や関節痛が出やすいことです。ウイルスが全身に回るため、体全体に症状が出る傾向があります。一方、普通の夏風邪では、それほど強い倦怠感はありません。そもそも夏風邪はのどの痛みや鼻水などの局所的な症状が特徴です。全身に症状が出ていたら、デルタ株を疑ってもいいでしょう」(望月さん)
息苦しさを伴うかどうかも重要な判断基準となる。
「夏風邪で息切れの症状はほとんど出ないのですが、デルタ株は息切れを伴い、肺炎まで進行するケースもあります。階段を上るときにいつもより苦しかったり、呼吸時の息苦しさや肺の違和感があったらデルタ株を疑うべきです」(寺嶋さん)
とにかく、大切なのはまず夏風邪にかからないということだ。
「直接エアコンの風にあたらないようにしたり、クーラーの設定温度を下げすぎないなど、夏風邪にかかって紛らわしい状況になったり、さらにコロナ感染を招いたりしないための注意が求められます」(寺嶋さん)
夏風邪はめったに命にかかわらないが、デルタ株には要注意だ。
「夏風邪と似た症状でも、デルタ株は急に重症化することがあり、後遺症が長く残ることも考えられます。見極めが難しい状態が続いたら、夏風邪だとセルフジャッジせず迷わず医療機関を受診してほしい。それがあなたや周りの人を守ることにつながります」(望月さん)
「迷ったら受診する」の心がけでこの夏を乗り切りたい。
※女性セブン2021年8月19・26日号