高齢者は「慎重な投与」が必要な降圧剤リスト
「飲み忘れ」で薬が増える
銀座泰江内科クリニック院長の泰江慎太郎医師は、こんな高血圧患者を断薬に導いた。
「血圧が180/100mmHgと非常に高く、別のクリニックで降圧剤を4種類処方されていた50代前半の男性です。
まずカルシウム(Ca)拮抗薬2種とアンジオテンシンII阻害薬(ARB)1種を配合剤1種に変えました。他に比べて効果が低いと判断した利尿薬は中止し、その代わりナトリウムの排泄に役立つカリウムを多く含む野菜や果物の摂取を指導しました」
睡眠指導もあわせて行なった結果、男性の血圧は4か月後に130/80で安定。さらに薬を配合剤からARBに変えると、4か月後には上が120まで下がり安定した。
「ここでARBの処方も中止して、最終的には薬をゼロにすることができました」(泰江医師)
降圧剤では「似た薬効を持つ薬が何種類も処方されることがある」と指摘するのは秋津壽男医師(秋津医院院長)だ。
「ある80代の男性は、降圧剤や血栓予防薬など1日10種16錠が処方されていた。似た降圧剤を3種も服用していたので2つに絞り、同様に薬効が近い血栓予防薬2種を新薬1種に見直すなどして5種5錠まで減らしたが、数値は悪化しなかった」
獨協医科大学病院腎臓・高血圧内科の石光俊彦医師は、「飲み忘れ」による服用の乱れが症状悪化を起こすと指摘する。
「降圧剤は服薬率(患者が指示された薬のうち実際に服用した割合)の低下により脳卒中などの発症リスクが高まります。多剤処方の患者さんは薬を正しく飲めないせいで症状が安定せず、逆に薬が増えていく場合が多い」