独特の文章をつづる石田ゆり子は夜の街でも目立ったオーラ
同作は、海の向こうでおじいさんと「私」が時空を超えて出会う話や、人気のない風車に現われた食いしん坊な鳥の話など、5つの物語から構成されている。そこで石田が翻訳した文章が“あまりに素敵だ”と話題になっているのだ。
たとえば、絵本のなかにはこんな描写がある。
〈それから女の子は肩にリスをのせたまま歩きだした。 そして芝生の上に立っているお父さんを見つけた。 女の子はお父さんのズボンをひっぱった。 お父さんは女の子を抱きしめた。 そして女の子は耳元でささやいた。 「アイ・ラブ・ユー」〉
芸能ジャーナリスト・三杉武氏が語る。
「彼女はそもそもSNSで発信する日本語が美しいと言われていた。この絵本に書かれた文章からも分かるように、1つ1つの言葉がゆっくりとしたリズムで刻まれた“ポエム調”とも言われる独特の文体。2017年に彼女がインスタグラムで『人生について心がけていること』として綴った〈人間だけが 過去と未来を案じて今を失くす、 と いつもおもいます〉という投稿のように、自己に向き合い、独自の抒情あふれる文章は、多くの世代からの共感を得ています。
今回の絵本の翻訳も、石田さん自身は英語のレッスンを受けている最中だとインスタグラムで明かしているように、英語がネイティブ並みに得意なわけではないのですが、石田さんの日本語の美しさに惹かれた出版社がオファーしたのではないでしょうか。
さらには、飼い猫との生活を綴った自著『ハニオ日記』3部作(扶桑社刊)は、これまでに累計24万部以上を売り上げており、ほかの出版社も目をつけているのは間違いない。その日本語力と日常を切り取る洞察力を生かして、彼女が大ファンと公言している平野啓一郎氏のような『純文学を書いてほしい』というオファーも出てくるのではないでしょうか」
マルチな才能を持つ彼女が次に進む道は、小説家なのか――。