角田裕毅はいままでにない日本人ドライバー
──今週末から後半戦がスタートしますが、注目ポイントを教えてください。
サッシャ:まず、フェルスタッペン(レッドブルホンダ)とハミルトン(メルセデス)のチャンピオン争いが大きな軸になりますね。とくにホンダのラストイヤーなので、チームもドライバーもチャンピオンになってほしいという気持ちはあります。もちろん実況としては、ハミルトンに負けてほしいとは思わないし、史上最多8度目のチャンピオンを見たい気持ちもあるけれど、今年に限って言えば、ホンダのチャンピオンが見たい(笑)。で、先ほども言ったように僅差だからこそ、戦略も緻密に、知恵の出しあいになっていくでしょう。どのタイヤを使い、どれを残すのか、金曜日の一回目のフリー走行から戦いは始まっています。
──そして角田裕毅選手。前半戦、予選でのクラッシュが続くなど、苦戦もありました。角田選手の走りをどうご覧になっていますか?
サッシャ:角田選手には期待しかありません。もともとヨーロッパの人は、目立たない人より、目立つ人や話題になる人を好む傾向があるんです。チャレンジして失敗して、そこから成長していく人を評価する価値観がある。角田選手はまさにそういうタイプで、その点で、いままでにない日本人ドライバーだと思います。無線の「トラフィック・パラダイス」が話題になったのも僕はよかったと思うし、走りでも、もっともっと活躍できるポテンシャルを持っています。結果を出すには、あとはめぐり合わせじゃないかな。プレッシャーをあまり感じず、のびのびやってほしいですね。
それから、ノリスやルクレールといった若手ドライバーにはF1の未来を感じますね。
──ノリスはいつもニコニコしていて人柄もよさそうで、個人的に注目しています。未来のチャンピオン候補たちの活躍や、移籍も目が離せませんね。
サッシャ:今、シミュレーター世代の躍進がすごいですよね。ノリス、サインツ、ルクレール、ラッセル……彼らを見ていると、新しい時代を感じます。レーサーとしてものすごく速く、能力があって、コース上ではアグレッシブだけど、いったんヘルメットを脱げば、みんな仲良く品よくいいヤツ、という感じ。「お前すげえな」って、仲間を讃えあえる関係。SNSに彼女との旅行の写真を載せたりとか、自分をプレゼンするのがうまくて、爽やかで敵をつくらないタイプですよね。
ひと昔前の、仕事もパーティーもハードモードで、ライバルとクラッシュしてコース脇で殴り合うようなドライバーが面白いという人にはちょっと物足りない部分があるかもしれないけど(笑)、オリンピックでスケートボード選手たちの明るさや仲の良さが人気を呼んだように、スポーツ全般が、そういう流れにあると感じます。SNS世代であり、Z世代である彼らがどのようなチャンピオンになっていくのか。同時に彼らの登場によってベテラン勢にも変化がある。あのアロンソがいいヤツになっていたりとか(笑)。世代交代を含めて、F1の未来が楽しみです。
◆サッシャ/1976年ドイツ・フランクフルト生まれ。10歳のときに日本に移住。日本語、ドイツ語、英語のトライリンガル。J-WAVE『STEP ONE』ナビゲーター、『ズームイン!! サタデー』『金曜ロードショー』(日本テレビ系)などにレギュラー出演するほか、各種スポーツ実況をはじめ、多方面で活躍中。雑誌『Oggi』(小学館)9月号より音楽新連載がスタート!
http://www.sascha348.com/
◆取材・文/砂田明子