国内

菅首相、不出馬の舞台裏 「2A」と「2F」の仁義なき暗闘

菅義偉・首相はなぜ総裁選を諦めた?(時事通信フォト)

菅義偉・首相はなぜ総裁選を諦めた?(時事通信フォト)

 自民党総裁選が急展開を見せた。それまで「再選に向け、やる気まんまん」とみられていた菅義偉・首相が、9月3日になって突然、立候補しない意向を表明。記者団に対して、「私自身、総裁選出馬を予定する中で、コロナ対策と選挙活動を考えると、莫大なエネルギーが必要で、やはり両立はできない。国民に約束している新型コロナ感染拡大を防止するため、専任したい」と述べた。支持率の低迷が続く中、来る衆議院総選挙に向けて「菅氏のままでは大敗する」と見切りをつけた自民党内の“菅降ろし”の動きに、事実上屈した形となる。カギになったのは岸田文雄・前政調会長の出馬だが、その裏には「2A」と「2F」の暗闘があった。

 8月末──岸田氏の出馬で劣勢に追い込まれた菅首相は、「政権の後ろ盾」である二階俊博・幹事長の更迭という捨て身の戦術を取った。

「安倍晋三・前首相と麻生太郎・副総理の描いたとおりの展開になってきた」

 そう勝ち誇ったような表情で語っていたのは安倍側近だ。

 安倍・麻生の「2A」が総裁選の裏側で仕掛けたのがこの二階降ろしだった。切り込み隊長役を担わされたのが岸田氏である。

 岸田氏は出馬表明会見(8月26日)以来、菅首相のコロナ失政を批判するのではなく、なぜか二階氏を批判の標的にした。会見では「国民の声を聞いて書き留めた」というメモ帳を掲げたものの、発表した公約は「自民党役員の任期制度(最長3年)導入」と「中堅・若手の登用」。幹事長在任5年になる二階氏を退任させるという宣言だった。

 その後も「二階幹事長のありように国民が関心を寄せている。風通しの良い政党にする」と、まるで“二階独裁”がコロナ失政の元凶であるかのように訴えた。だが、国民から見れば感染対策の失敗は明らかに菅首相の責任で、二階氏がコロナ対応の指揮を執っているわけではない。

 2Aの二階降ろしの本当の狙いは、総選挙の公認権とカネだった。

 総裁選が終わるとすぐ総選挙になる。しかし、自民党では群馬1区、新潟2区、山口3区、静岡5区など複数の選挙区で二階派と細田派や岸田派など他派の現職議員が公認を争い、幹事長の二階氏と安倍氏らが子分を公認させようと激しく対立している。政治ジャーナリスト・野上忠興氏が語る。

「幹事長は公認決定に大きな発言力を持つうえ、100億円単位とされる党本部の総選挙資金を差配する強い権限を持つ。2Aは苦戦が予想される総選挙で自派の議員にテコ入れして勢力を維持したい。そのためには、総裁選を利用して何としても二階氏を幹事長から引きずり下ろし、後任の幹事長に自分たちの言うことを聞く人物を据える必要があった」

 岸田氏は最初からそうした2Aの意向を汲んで出馬した。

「安倍さんや麻生さんは表向き菅支持を打ち出していましたが、岸田さんは、2F(二階氏)さえ潰せば2Aが自分の支援に回り、総理にしてくれると確信していた」(岸田派議員)

関連キーワード

関連記事

トピックス

2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
中途採用応募者が急に増えて担当者は困惑(写真提供/イメージマート)
《SNSの偽情報で実害》中途採用に「条件満たさない」応募者が激増した企業、勝手にFラン認定された大学は「少子化の中、学生に来てもらう努力を踏み躙られた」
NEWSポストセブン
趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
日本復帰2戦目で初勝利を挙げたDeNAの藤浪晋太郎(時事通信フォト)
横浜DeNA・藤浪晋太郎を大事な局面で起用する三浦大輔監督のしたたかな戦略 相手ファンからブーイングを受ける“ヒール”がCSの行方を左右する
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
15人の大家族「うるしやま家」(公式HPより)
《ビッグダディと何が違う?》フジが深夜23時に“大家族モノ”を異例の6週連続放送 今、15人大家族「うるしやま家」が人気の背景 
NEWSポストセブン
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン