総裁選の序盤情勢は選挙に弱い各派の若手議員が岸田支持に回る動きを見せ、新聞の世論調査でも岸田氏の支持が急上昇中だ。こうして包囲網を敷かれた菅首相は、二階氏に詰め腹を切らせ、2Aの軍門に下って再選に望みをつなぐしかなくなったのだ。
首相官邸で菅・二階会談が行なわれた日(8月30日)、出馬のあいさつに訪れた岸田氏を安倍氏は上機嫌でこう激励したとされる。
「出馬表明会見は評判が良かったね」
2Aの意向通りに二階氏のクビを挙げたことに対する“褒賞”の言葉だった。
同日夕方、自民党中枢にこんな情報が流れた。
「総理が官邸近くのホテルで秘書官と打ち合わせをした席に、岸田さんがいたらしい。そこで総理は岸田さんに、後任の幹事長への就任を持ちかけたとされる」(同党幹部)
“幹事長にするから、総裁選は出馬辞退してくれ”と頼み込んだことになる。
会談の有無を岸田事務所にぶつけると、「事実ではございません」と回答した。
岸田氏は翌31日夜にテレビ番組で、二階氏の後任を打診された場合、「受けることは絶対にない。党総裁選に挑戦しようと手を挙げている」(BS日テレ)と拒否する意向を示した。
「その情報が流れたこと自体が、岸田さんを揺さぶる情報戦の一環である可能性も否定できない。それほど菅陣営は焦っていた」(同前)
2Aにとっては、二階氏を更迭しさえすれば、総裁選は菅氏と岸田氏のどちらが勝利してもよかったのだ。