自衛隊大規模接種センターで、1回目の新型コロナウイルスワクチン接種を終了後、2回目の接種予約(イメージ、時事通信フォト)
そうかもしれないが、現状では発熱もなく過ごしているとの発表を聞く限り重篤化はしていない。罹患は仕方ないが、副反応よりノーワクチンによる重篤化のほうが怖いとされている。「接種によるベネフィットが上回ると考えられることから、予防接種が実施されている」というのが厚生労働省の見解だ。米疾病対策センターも発表しているが、ワクチンを2回打っても今回の河村市長のように罹患する可能性はあるものの、重篤化は極めてまれとされている。
「でもコロナってどんどん新しいのが出てるんでしょう? (ワクチンが)効かなくなるんじゃないかしら」
もっともな話で、厚生労働省は国立感染症研究所の分析とともに「懸念される変異株」と「注目すべき変異株」を発表している。前者は「主に感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した可能性のある株」でアルファ株、ベータ株、ガンマ株にいま懸念されているデルタ株。後者は「主に感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される株」で、イプシロン株(米国)、シータ株(フィリピン)、カッパ株(インド)、ラムダ株(ペルー)と、前者に比べ聞き慣れない変異株が並ぶ。そしてこれに9月1日に明らかにされたミュー株(コロンビア)が加わることになる。WHOはこのミュー株を「注目すべき変異株(VOI)」であり、「ワクチン耐性を持つ」可能性があると示準している。
ワクチン打ったからもう平気ってノーマスク
「なにを信じたらいいかわかんないわね、でもまあ、死ぬときは死ぬから」
みんな笑うが、どこか納得いかない乾いた笑いであることがマスク越しにも伝わる。長生きして、まさか晩年にこんな疫禍の時代を迎えるとは思わなかっただろう。
「でもね、知り合いのお爺さんなんてワクチン打ったからもう平気ってノーマスクなの。あの人も死ぬときゃ死ぬなのかしらね」
困ったことに、こうした「ノーマスクおじさん」および「ノーマスクおじいさん」が極稀にうろうろしていたりする。地域によっては稀ではなく普通にいる。たとえば都心の歓楽街などマスク規律が限りなくゆるい「ノーマスクお兄さん」が普通に歩いている。東京などまだマシで、筆者の故郷の千葉県、そのさらに田舎などノーマスクでママチャリ漕いでる爺さんが当たり前である。高齢者の経営するノーマスクの飲食店が普通にあってびっくりした。
「でもマスクって効果ないって話もあるし、私もみんながしてるからしてるけど、苦しいし嫌よ、気持ちはわかるわ」
70代後半、別のお婆ちゃんが混ぜっ返す。もうマスク論争は1年半におよぶが、彼女の言うこともまたもっともで、ワクチン以上にマスクでウイルスを防げる効果が、私たちが期待するほど高くないのは確かである。東京大学医科学研究所によれば、相対する者が吸い込むウイルス量は、吐き出す側がマスクをすると不織布、布マスクともに30%程度、吸い込む側がマスクをした場合は不織布で50%、布マスクで80%程度抑えられたという。理化学研究所の「富岳」による実験では、咳をした場合に抑制できる飛散は不織布マスクが80%、ポリエステルや綿のマスクで70%。絶対でないところが悩ましい。