金メダル囓り騒動ののち定例会見で謝罪する河村たかし名古屋市長(時事通信フォト)

金メダル囓り騒動ののち定例会見で謝罪する河村たかし名古屋市長(時事通信フォト)

「河村さんって手作りマスクだったでしょ、やっぱり布はだめなのね」

 高齢者の一部にはいまだに布製の手作りマスクの人がいる。若者の一部はポリエステル(ウレタン)のおしゃれマスクだろうか、それらより有用性の高いとされる不織布を「ダサい」というだけで嫌う困った人もいる。お年寄りの布マスク派は「使い捨てがもったいない」だそうだ。ただ先にも書いた通り、マスクの材質による効果の差はあるものの、どれも絶対ではない。そもそもマスク自体「現時点では、市中におけるマスク着用の有効性に関するエビデンスは限られている。」とWHOが発表している事実がある。ECDC(欧州疾病予防管理センター、EUの専門機関)に至っては「市中における非医療マスク着用の有効性に関するエビデンスはわずかで、確実性は低い。」とまで断じている。「効果の大きさは不確実」(ECDC)というのが実態だ。

 こう書くと反マスクを喜ばせてしまいそうだが、それでも「小~中程度の有効性がある」(ECDC)としているならば、まあマスクをするに越したことはないだろう。それにしても、本当にやっかいなウイルスだ。

誰しも罹患する可能性がある

「ワクチン漬けにされるのも嫌だけど、どうにもならないものね」

 大丈夫、私たちは生まれてずっと何らかのワクチン漬けである。お年寄りも生まれた時はともかく、これまでに数多のワクチンを打ってきたはずだ。コロナワクチンはそれらに比べれば治験も実証も十分でないが、未知のウイルスに対峙したばかりの人類、致し方ないと言っては語弊があるかもしれないが、実際、いたしかたないのが現実だ。どうにもならない、その中で最終的な判断は個人に委ねられている。厳しいが、これもまた現実だ。

「あの人なんだか憎めないのよね、河村さん、かわいい人よね」

 かわいいとか同意に困るが、今回の件に関してだけはメダルの件やセクハラとは別に彼を責めてはいけないことは確か。ワクチン2回接種で罹患という稀に見る症例、お気の毒な話でこうしてお婆ちゃんたちも心配している。幸い重篤ではないようで、かわいいかはともかく、昭和脳さえ治れば悪い人ではないと思う(自信はない)。

「情報とかいっぱいで、わかんないのよね。だから市の広報誌で決めてるわ」

 彼女たちは幸いにして陰謀論にはハマっていなかったが、情報を取り込みすぎて陰謀論者になってしまう者もいる。ワクチンを打つも打たないも現時点の日本では自由である。今回の記事は筆者が趣味の会で教える高齢者のみなさんに厚生労働省の資料を使い説明したことを書き起こしたが、「国は嘘つき」「行政は隠蔽している」とワクチンを打たないのもまた自由である。問題はそれを他者に押しつけ、攻撃することである。結局のところ、「エビデンスは限られている」(WHO)とされていることは事実なのだから。

「じゃあ河村さん責めちゃだめね」

 お婆ちゃんの言う通りで、マスクがなんであれ、ワクチンを2回打っても河村市長のように罹るときは罹る。だから罹患した人を責めてはだめだ。メダルとかシャチホコとかなんでも口にしてしまう赤ちゃんのような河村市長だが、それとこれとは別。「菌メダル獲得」などと揶揄してはいけない。誰しも彼のように罹患する可能性がある。現時点ではマスク(なるべく不織布マスク)をして、手洗いなどの消毒を徹底して、ワクチンを打つ、ベストではないがベターな対応はこれしかない。それぞれに生活が、人生があるのにこのコロナ禍というのは理不尽な話だが、その理不尽の矛先を他者に向けるような、コロナではなく人間という敵を作り出す分断だけは避けなければならない。

※今回の情報はすべて厚生労働省の公式ホームページの発表を元にしている。あらゆる国内外の想定と評価を網羅しているので一読することを薦める。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)。近著『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)。

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