横浜政財界のドンと呼ばれる藤木企業の藤木幸夫会長

横浜政財界のドンと呼ばれる藤木企業の藤木幸夫会長

 横浜市の公募は2017年から2018年にかけて実施された。ヨコハマエアキャビンは遊園地の遊具や観覧車で国内随一のメーカーとして知られる泉陽興業が手がけた。

 一方、もうひとつのロープウェイ計画は横浜市長選で絶大な影響力を発揮した藤木氏が声をかけて地元企業が力を結集。共同事業体を組織している。

 2つのロープウェイ計画のどちらも、明らかに訪日外国人観光客の需要が増えることを見込んだ大型開発だった。しかし、2020年初頭からの新型コロナウイルス禍によって訪日外国人観光客の需要は大きく減退。それでもヨコハマエアキャビンは開業へと漕ぎ着けている。

「ヨコハマエアキャビンは市が公募した事業のひとつですが、あくまでも民間事業者が全費用を負担することを前提にしています。そのため、市の財源はいっさい使っていません。もうひとつのロープウェイについても同様です」(同)

 ヨコハマエアキャビンは、今年4月に桜木町駅と運河パーク駅の約600メートル間で開業。短い区間ではあるものの、ベイエリアというロケーションと高層ビル群を空中散歩ができるというアトラクション的な要素が話題を呼んでいる。

 一方、もうひとつのロープウェイはヨコハマエアキャビンと比べても明らかに壮大な計画で、横浜駅から山下埠頭までを空中で結ぶ。詳細なルートは明らかになっていないが、約4キロメートルの規模になるだろう。ヨコハマエアキャビンと比べて、そのスケールは段違いに大きい。それだけに建設費も莫大になることが予想される。そうした部分がネックになっているからなのか、その後に音沙汰がない。

「もうひとつのロープウェイは、『現段階において、特に動きがない』としか申し上げられません。仮にロープウェイ計画が白紙になっても、市が事業者を再公募することは考えていません」(同)

 二つ目のロープウェイは藤木企業、小此木、川本工業、横浜岡田屋など横浜市を拠点とする企業が出資した事業体を結成して計画した。こうした経緯からも、このロープウェイ計画に藤木氏が大きく関わっていることが窺える。それだけに、このまま計画がフェードアウトするとは考えづらい。やはり市長選の結果が影響を及ぼすことになりそうだ。

 横浜市長選では藤木氏がバックアップした山中候補が事前の予想を大きく覆して圧勝した。山中市政が発足することによって、公約通りに山下埠頭のIR計画は撤回される公算が高い。

 同地の整備計画を練り直す必要に迫られている今、藤木氏が大きな影響力を及ぼすもうひとつのロープウェイ計画はIR計画とは対照的に、市長選圧勝の余勢をかって再び動き出すかもしれない。

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