“世界名作シリーズ”の主題歌は曲者ぞろい
「『フランダースの犬』のときは、物語が悲劇なので、曲はかわいく明るく歌うように指示されました。渡辺先生の曲は、ひとつのセンテンスが長く、息継ぎしないまま、声を一定に出していく点でも難しかったですね」
『母をたずねて三千里』は渡辺さんではなく、NHK連続テレビ小説『おしん』の音楽を作曲した坂田晃一さんが担当したという。
「最初は静かに、途中から母を思う気持ちが湧き出てくるように徐々に気持ちを高め、“さあ、出発だ!”から元気よく、という指示をいただいたので、音を外さないようにしつつ“さあ!”からは思い切り元気に歌いました」
数々の主題歌を作曲家の難しい注文以上のクオリティーで歌い上げてきた大杉さんだが、感情のセーブができず苦戦した歌もあったという。それが『あらいぐまラスカル』の挿入歌『もえるゆうひ』だ。
「この作品は、途中で主人公のお母さんが病死してしまうんですね。お母さんの最期が沈む夕日を連想させるんです。私は歌いながら、“待って待って、沈まないでお母さん、死なないで……”という気持ちを込めたんですが、気持ちが昂りすぎて、思うように歌えなくなってしまいました。でもそのときは、あの録り直しばかりする渡辺先生が、すぐにOKしてくれたんです。しかも、“よかったよ。今日はおれが負けた!”と—歌い手冥利に尽きる歌でしたね」