ビジネス

幻の現金輸送専用鉄道車両「マニ30」 新札登場で封印は解けるか

マニ車外観。強盗などの襲撃に備え窓は防弾ガラスになっていたとも言われる。

マニ車外観。強盗などの襲撃に備え窓は防弾ガラスになっていたとも言われる。

 現金輸送車といえば、厳重に警備された特殊な自動車を思い浮かべる人が多いだろう。日本銀行は、福沢諭吉の一万円札と樋口一葉の五千円札、野口英世の千円札が発行される前年度まで、鉄道も使って大量の現金を輸送していた。輸送を担っていた車両「マニ30」は半世紀ほどの運用のなか、徐々に話題にすることがタブー視されていった。ライターの小川裕夫氏が、話題にすることも避けられてきた幻の「マニ30」の現在についてレポートする。

 * * *
 渋沢栄一が顔となる新一万円札の印刷が9月1日から始まった。現在、一万円札の肖像は福沢諭吉だが、2024年に新一万円札へと切り替わる。昨今、キャッシュレス化が進み、現金を使用する機会は減っている。とはいえ、いまだ現金を使う機会は多い。ゆえに、新一万円札には、これまで以上に偽造を防止するための最新技術が用いられている。

 日本銀行は、新一万円札に用いられる偽造防止技術をツイッターなどでも積極的に紹介している。防止技術を情報公開したら、逆に偽札製造を試みようと悪だくみをする人たちの幇助につながりそうだが、日本銀行には偽造されることがないという絶対の自信があるのだろう。それほど高度な技術が日本銀行券には使われている。

 その一方、日本銀行は輸送体制に関しては頑なに口を開こうとしない。例えば、日本銀行券の印刷を所管する国立印刷局は、東京・王子・小田原・静岡・彦根・岡山の6工場を有する。このうち、王子工場は郵便切手や有価証券類を担当。また、岡山工場は有価証券類や紙幣の用紙製造を担当し、印刷は手がけていない。

 つまり、東京・小田原・静岡・彦根の4工場で日本銀行券は印刷されていることになる。日銀は、北は北海道旭川市から南は沖縄県那覇市まで支店を置く。業務上、これらの支店に大量の日本銀行券を輸送しなければならないわけだが、その輸送体制は長らく謎のベールに包まれていた。

「大変恐縮ですが、現金輸送にかかる詳細は過去の情報を含めセキュリティに関することを含みますので、お答えを差し控えさせていただきます」と言葉を濁すのは日本銀行広報部の担当者だ。

 セキュリティの観点から、現状の輸送体制について公言できないのは仕方がない。しかし、すでに歴史となっている部分についても質問しても「セキュリティに関わることなので回答できない」(同)と繰り返す。

関連キーワード

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ブラジルにある大学の法学部に通うアナ・パウラ・ヴェローゾ・フェルナンデス(Xより)
《ブラジルが震撼した女子大生シリアルキラー》サンドイッチ、コーヒー、ケーキ、煮込み料理、ミルクシェーク…5か月で4人を毒殺した狡猾な手口、殺人依頼の隠語は“卒業論文”
NEWSポストセブン
9月6日に成年式を迎え、成年皇族としての公務を本格的に開始した秋篠宮家の長男・悠仁さま(時事通信フォト)
スマッシュ「球速200キロ超え」も!? 悠仁さまと同じバドミントンサークルの学生が「球が速くなっていて驚いた」と証言
週刊ポスト
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン