CBD配合クリームの美容効果が注目されているが…(写真はイメージ Ph/Getty Images)
持っているだけで違法!粗悪品が蔓延
CBDが日本で初めて注目を浴びたのは、2019年。化粧品の成分としてではなく、薬品としての臨床効果に、厚労省が着目した。聖マリアンナ医科大学医学部脳神経外科准教授の太組一朗さんが言う。
「CBDを含む難治性てんかん治療薬『エピディオレックス』に有用性があるとみて、国内でも適切な使用ができるよう、研究を進めています。早ければ、今年度中の治験開始を目指しています」
一方で、太組さんは、CBDを含む医薬品の治験こそ進められているが、化粧品としての安全性は未知数だと話す。なかでも、同じく大麻から抽出される「THC(テトラヒドロカンナビノール)」という成分は、いわゆる“ハイになる”“ラリる”作用や依存性がある麻薬成分で、これが化粧品に使われるCBDに混入しているおそれがあるのだ。
当然ながら、日本ではTHCが少しでも含まれていれば違法。知らずに購入したとしても、持っているだけで違法薬物所持となり、処罰の対象になる。なんと、すでに日本で取り扱われているCBD商品の中に、このTHCが混入しているものが見つかっている。
「以前、日本の大手小売チェーンで売られているCBD配合商品37点を検査したところ、そのうち22点に、パッケージの表示に虚偽があることがわかりました。CBDすら含まれていないものがあった一方、違法なTHCが含まれているものも見つかりました」(引地さん・以下同)
現在、日本では、大麻取締法によって、THCの含有量が少ないと考えられている「大麻草の成熟した茎、及び大麻草の種」のみ、使用が認められている。種は七味唐辛子や食用油など、茎は織物などの原料として古くから使われているが、CBDの国内生産はまだ認可されていない。
輸入の際も、化学合成CBDまたは成熟した大麻草の茎だけから抽出されたもののみ、税関を通ることができる。禁止部位から採れた違法なCBDは、THCを多く含んでいる可能性が高く、国内に持ち込むことは許されない。にもかかわらず、違法かつ粗悪な商品が流通してしまっているのだ。
「税関への届出は輸送時追跡番号と連絡先、3種の書類(証明書、分析書、原材料及び製造工程の写真)の提示だけで済んでしまうため、すでに市場に出回っているものを調査して初めて、違法だとわかるケースがあります。
なかには、違法品を国内で加工・箱詰めして“日本製”とうたっている業者や、成分表をシールで隠して販売している業者もあります。ひどい場合は、堂々と『フルスペクトラム(麻薬指定成分THCを含む化合物がすべて含まれている抽出物)』と書かれているものさえあります。
こうした商品はいまも全国のバラエティーショップやコスメショップに並んでいて、消費者からの依頼を受けて調査し、違法性が明らかになった事例がいくつもあります」
まだCBDについて深く知らない人が多い現状を逆手に取り、“いまのうちに”“バレないように”と、違法な商品を売りさばこうとしている業者が後を絶たないのだ。
「アメリカでは、茎以外の部位から採れたCBDも合法です。一方、茎のみから抽出する“日本向け”CBDの生産には、莫大な手間とコストがかかる。裏を返せば、日本で適法なCBDをつくって輸出できる業者は、それだけの技術や資金があり、信頼度が高いということです」