「2万人程度の規模ではコロナ感染者はほとんどいないため、咳やくしゃみ、味覚や嗅覚の障害などコロナに似た症状が出た人をカウントしています。飲食店の営業自粛にコロナ流行を抑制する効果があるなら、感染メカニズムがよく似ているインフルエンザや普通の風邪などの感染を抑える効果もあると考えられるので、抑制効果を測定するための指標として使っています」(高久准教授)
時短営業と酒類の提供禁止で、インフルエンザや普通の風邪が減ったのなら、コロナの流行も抑制されるはずと考えたわけだ。
「コロナへの恐怖心」が行動を左右する
結果はどう出たのか。高久准教授は、論文で「飲食店が時短営業をしても、他の対策を併用しなければ、新型コロナウイルスの感染の抑制には寄与しないことが示唆された」と結論づけている。
しかし、今まで飲食店で多くのクラスターが発生していたのは事実だ。なぜ飲食店の営業自粛に感染を止める効果がないのか。
「アンケート調査では、外出行動の変化に関する質問で、『旅行をしない』『ソーシャルディスタンスを取る』『不要不急の外出を避ける』『人混みを避ける』という4点を訊いていますが、コロナ禍においても居酒屋などを利用する若い層はコロナを怖がっておらず、生活の他の面でも感染リスクの高い行動を取りがちであることがわかりました。営業自粛で居酒屋などの利用率が下がるのは事実ですが、結局、怖がっていない層はどこか別の場所で感染しているのです。
一方、死亡リスクの高い高齢者層は、コロナ禍においては、宣言が出ていようがいまいが、居酒屋などを利用しなくなったので、飲食店の営業自粛は高齢者層に影響がほとんどありません」(同前)