品川駅を歩く朝の通勤客(イメージ、時事通信フォト)
「品川駅でうんざりするような広告が延々並んでました。ふざけてますよね。どんだけ上目線なんだか」
取材後、さらに別の後輩からの電話。『今日の仕事は、楽しみですか。』と品川駅のコンコースに連ねられた全面広告のことだろう。彼は品川駅経由だから嫌でも見せられたというわけか。彼も含めた何の罪もない品川駅経由のサラリーマンにとっては意識高い系で上から目線の通り魔に遭ったようなもので、こんな「スキームをアライアンスとエグゼキューションしてコミットしたフィックスをローンチしましたウィンウィン」(※イメージです)を見せられても困る。早々に撤去したようだがこれでは迷惑系YouTuberと大差ない。
とにもかくにもウィズコロナの日常が戻り始めた。満員電車と長いだけの会議、いつまでも会社に残る忌々しい会社大好きっ子も復活だ。エッセンシャルワーカーを始めとした実際に現場に出なければならない方々はともかく、まだコロナが本当に収束したか不透明な現状で、リモートワークで回っていた企業まで出社する必要があるのだろうか。
「こんな急に戻るなんてね、やっぱり日本人は会社が好きなんだよ」
冒頭の60代男性がホームに並ぶ人の列を眺めつぶやいた言葉、日本人が会社好きなのか、緊急事態宣言が明けた途端に出社しろと命令する経営者が会社好きなのかはわからないが、満員電車の復活は確かだ。アフターコロナはリモートワークにシフトすると予想する向きもあったが、どうやら日本型経営はウイルスごときでびくともしない。しかしリモートワークの快適さに目覚めてしまい、出社に疑問を感じてしまった、ある意味「気づいてしまった」社員も多いに違いない。
日本型経営は根強くとも、日本人の働く意識は、会社に対する考え方そのものは、このコロナ禍によって確実に変わろうとしている。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。著書『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)他。近著『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)。