芸能

伊藤咲子が明かす『スタ誕』秘話 本番前に「落ちる」と宣告された謎

1973年の『スター誕生!』第5回決戦大会で合格した伊藤咲子

1973年の『スター誕生!』第5回決戦大会で合格した伊藤咲子

 放送開始から50周年を迎えた伝説のオーディション番組『スター誕生!』(日本テレビ系)からは、数多くのアイドルが生まれた。1973年の第5回決戦大会で合格した伊藤咲子に、『スター誕生!』で合格した時の思い出を聞いた。

 * * *
 1回目のテレビ予選では、小柳ルミ子さんの『漁火恋唄』を裏声で歌い、審査員の松田トシ先生に「息が漏れてるわ」と指摘され、合格点の半分にも届きませんでした。歌手の夢はあきらめようと思っていると、プロデューサーの池田文雄さんが「今日は粒揃いだった。落ちた子みんな、今度の日曜の予選においで」と声を掛けてくださいました。

 翌週、他の子たちは来ず、私だけが参加。地声で歌える朱里エイコさんの『見捨てられた子のように』に曲を変えたら上手くいき、その次のテレビ予選も通過。意気込んで決戦大会に臨みました。

 でも、本番直前にスタッフが「残念だけど落ちるんだよね」って。呆然としました。この日は出場者が12人いて、私が歌うのは12番目。しかも、1番から4番までの人が立て続けに合格した。一度に5人も受かるなんてないから、やっぱりダメなのかなと。歌い終わると、走馬灯のように今までのことを思い出して……。目頭を押さえてメソメソ泣いていると、欽ちゃんが「おぉ!」と叫んでいる。手の隙間から覗くと、プラカードがいっぱい見えて号泣しました。

 スタッフは番組を盛り上げるために、わざと「落ちる」と言ったのかな。数年後に聞くと、「そんなこと言ってねえよ」とはぐらかされましたけど(笑)。

 黄色のワンピースで出場したからか、デビュー曲は『ひまわり娘』に決まり、全身黄色の衣装を渡されました。世間に覚えてもらうため、常にその格好で移動しなければならなかった。帽子、ハイソックス、靴、バックまで全て黄色ですよ。電車に乗ると「あの子、頭大丈夫なの?」とヒソヒソ声が聞こえてきました(笑)。

『ひまわり娘』でこの年の日本歌謡大賞新人賞に選ばれました。その中から放送音楽新人賞2人が選ばれる。最初に中条きよしさんの名前が呼ばれて、次は絶対自分だと思ったら、負けてしまったんですよ、西川峰子さんに。悔しくて武道館のトイレで声を上げて大泣きしていると、『スタ誕』のタイムキーパーの小松洋子さんが駆けつけてくれて……。

 翌年、同じ武道館で日本テレビ音楽祭があり、金の鳩賞を受賞できた時は洋子さんの胸で嬉し涙を流しました。『スタ誕』は本当に温かいスタッフばかりでした。

【プロフィール】
伊藤咲子(いとう・さきこ)/1958年生まれ、東京都出身。高校1年の1974年4月、『ひまわり娘』でデビュー。1976年、『NHK紅白歌合戦』初出場。現在も『スタ誕』スタッフや出演者と交流を続ける。

取材・文/岡野誠

※週刊ポスト2021年10月29日号

関連記事

トピックス

近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
「参政党パワー」の正体とは(神谷宗幣・代表)
叩かれるほどに支持が伸びる「参政党パワー」 スピリチュアリズム勃興の中で「自分たちは虐げられていると不安を感じる人たちの受け皿に」との指摘
週刊ポスト
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン