経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
突然の辞任は衝撃的で、発表の翌日に行われた会見では、どんな説明がされるのか注目が集まっていた。ネット生配信はもちろん、情報番組に差し挟む形でテレビの全国放送生中継もされた、プロ経営者として知られる新浪剛史氏の麻薬疑惑について説明した会見を、臨床心理士の岡村美奈さんが分析する。
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いったい何が起きたのか。9月2日、サントリーホールディングスは新浪剛史氏が、会長を辞任したと突然発表した。新浪氏が購入したサプリメントに大麻由来の違法薬物が含まれている可能性があり、警察の捜査を受けたという。本人は「適法だと思っていた」という主旨の話をしたというが、同社の対応は厳しかった。会見に登壇した鳥井信宏社長は、「サプリメントに関する認識を欠いた新浪氏の行為は、代表取締役会長として求められる資質を欠くと言わざると得ないと判断した」と述べた。
自宅から違法薬物は見つからず、簡易尿検査でも陰性。本人は関与を否定し、「潔白」を主張。だが同社の取締役会は捜査の結果を待つことなく「日本を代表する企業の経営者として、こうした疑義を持たれること自体が問題である」と判断。鳥井社長は新浪氏の辞任に悔しさをにじませ、「二人三脚でやるといったのに非常に残念だ」と声を震わせ、目頭を赤くにじませた。
翌日の3日、新浪氏は代表幹事をつとめる経済同友会の定例会見に現れた。やや青みがかったグレーのスーツに同系色のグレーのネクタイと、謝罪会見らしい色合いである。冒頭、新浪氏は「この度は私のことで、お騒がせして申し訳ありません。深く反省しております」と頭を下げた。“私のことで”と表現したのは、自分は違法なことは何もやっていないという自負があるからだろう。疑義が生じて以降の経緯を説明するが、その言葉にいつものような力はない。
米国で購入したサプリメントは「CBD」(※大麻成分のひとつカンナビジオール、日本国内での規制はされていない)で、「日本でも同じ物を購入し飲用していた」「日本では許されているという強い認識があった」とゆっくりと述べた。購入目的は「出張が多く、時差ボケがひどいので」、なぜ米国で購入したかについては「米国の方が圧倒的に安いから」と説明。米国の後、サプリが違法かもしれない国に出張するため、自分の身体や健康をみてくれる著名な方に預けて、ハンドキャリーで持ち帰ってもらったと話した。