トゲウオのメスも水中で「におい」を嗅ぎ分け、好みのオスを見つける
フワちゃんの意外性のある姿を知ることが第一歩
ママ友、子供の担任の先生、パート先の同僚──どうしてもかかわらなくてはならない初対面の人に生理的嫌悪を抱いてしまった場合、どうしたらいいのだろう。
「生理的嫌悪というのは、『この人は危ない』などネガティブな判定が出たときに感じるもの。初対面の人に対しては、その人の話し方のトーンや緊張感、表情、においなどの情報を過去の自分の体験データと照らし合わせて予測し、“決めつける”のです」
つまり、これから仲よくしていけば新たなデータが蓄積され、ポジティブな体験が増えていけば「安心できる」と判断が切り替わっていく可能性がある。第一印象での嫌な気持ちは自分の“決めつけ”だと割りきって、少し関係を続けてみるといいだろう。
すでに抱いてしまった「生理的にムリ」の感情も、乗り越えられることがある。
「新たな一面を見て、データを多様化させるといい。たとえば、バラエティー番組に出ているフワちゃんが嫌いでも、マジメな話をしているフワちゃんは少しマシだと感じるかもしれない。そうやって、生理的嫌悪を抱く相手の何が嫌なのか見つけていけば、改善の方法も見えてきます。
もちろん、自分だけでは解決できないならカウンセリングに通うのもいいでしょう。カウンセリングには、言葉にしなければ扱ってくれない診療所もあれば、身体的な感覚を扱ってくれる診療所もある。自分に合ったところを選ぶといいでしょう」
夫への生理的嫌悪も、「いいところ」へ積極的に目を向けることでブレーキが利くことがある。岡野さんが言う。
「経済力があったり、子供への愛情が深かったり、いいところの方が多ければがまんできることもあります。
同時に、生理的にムリな部分を改善していく努力も必要です。夫のワキガに耐えられず離婚した夫婦がいましたが、言いづらかったようで、妻は最後まで離婚理由がワキガだとは言わなかった。最近はにおいを抑える手術などもありますが、言わなければ解決のしようがない。生理的にムリな1つの欠点が改善すれば、夫婦仲がよくなることは珍しくありません」
生理的嫌悪は、動物的本能として身を守るために必要不可欠なものだ。しかし、現代社会を生きる上では、手放したことで得るものも大きい。
「社会は人間同士のやりとりで成り立っていますから、それが負担になると仕事も日常生活もつらくなってしまう。実際、それに揺さぶられている人は結構います。
『生理的にムリ』と知らず知らずのうちに心理的なブレーキをかけてきたことが改善できるようになると、驚くほど生きやすくなります」(前田さん)
その生理的嫌悪で生きづらさを感じていないのなら、無理に改善する必要はない。
自分の本能の声に耳を傾ける──それができれば、少しラクに生きられそうだ。
※女性セブン2021年11月4日号