ビジネス

「エンゲル係数」が急上昇 年収500万円世帯の食費はひと月あたり4000円増加

時短要請も解除され、リベンジ消費に期待する飲食店(新宿/時事通信フォト)

時短要請も解除され、リベンジ消費に期待する飲食店(新宿/時事通信フォト)

 コロナ禍の巣ごもり生活や在宅勤務の広がりで「エンゲル係数」が急上昇している。消費に占める食費の比率を指すが、年収が上がるほどエンゲル係数が低くなるという法則も崩れている。いったいなぜなのか。ニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也氏が、コロナ後のリベンジ消費の見通しも含めて考察する。

 * * *
 新型コロナは、9月以降、第5波の新規陽性者数が急速に減少した。重症者数も減少し、各地の医療の逼迫も緩和された。その要因として、専門家からは、一般市民の感染対策強化、人流(特に夜間の滞留人口)の減少、ワクチン接種率の向上などが挙げられている。ただ、冬には第6波の襲来も懸念されるため、警戒と対策を続けるべきとの指摘もある。

 緊急事態宣言は9月末に解除された。現在は経済の再開に向けて、飲食店の時短営業の解除、各種イベントの人数制限の緩和などが実施されている。旅行会社では、ワクチン・検査パッケージの実証実験の対象ツアーも始まっている。

 ただ、企業によっては、テレワークの定着が進んだところもあり、人々の生活が単純にコロナ前に戻ることはないとの見方も出ている。読者にも、巣ごもり生活が続いた結果、外食が減ったという人は多いだろう。

「家計調査」(総務省)によると、消費支出に占める食費の割合である“エンゲル係数”がコロナ禍で上昇しているという。今回は、コロナ禍と食の変化について、考えてみることとしたい。

1984年以来の水準に急上昇したエンゲル係数

 エンゲル係数は、19世紀のドイツの経済統計学者エルンスト・エンゲルにちなむ。彼が、ザクセン王国やプロイセン王国の統計局長を歴任した際、家計調査の結果から見出した、「所得が高くなるにつれ、エンゲル係数は低くなる」という法則が、「エンゲルの法則」として知られている。

 エンゲルの法則は、日本でも戦後の復興や高度経済成長の様子によく当てはまった。洗濯機、冷蔵庫、テレビ、クルマ、海外旅行など、食費以外の消費が増えて、国民の生活水準が上がるとともに、エンゲル係数は低下してきた。この係数は、国民の豊かさを表象する指標ともいえた。

 エンゲル係数は、この30年あまり20%台前半で推移してきたが、2020年には26%にまで跳ね上がった。前年に比べて、2ポイント以上の急上昇だ(別掲図1参照)。この水準は1984年以来となる。背景として考えられるのが、コロナ禍の影響である。

【図1】コロナ禍で急上昇するエンゲル係数

【図1】コロナ禍で急上昇するエンゲル係数

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
フリー転身を発表した遠野なぎこ(本人instagramより)
「救急車と消防車、警官が来ていた…」遠野なぎこ、SNSが更新ストップでファンが心配「ポストが郵便物でパンパンに」自宅マンションで起きていた“異変”
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
「『逃げも隠れもしない』と話しています」地元・伊東市で動揺広がる“学歴詐称疑惑” 田久保真紀市長は支援者に“謝罪行脚”か《問い合わせ200件超で市役所パンク》
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン