幼少期に「母親のメシマズに悩まされた」というライターのトイアンナさんが振り返る。
「印象深いのは母が作るカレー。ミカンや生のブロッコリー、目玉焼きが入った代物で、とても食べられたものではありませんでした。母曰く『インドカレーのデザートはフルーツだから(ミカンを)入れた』『玉子を入れるとカレーは美味しくなる』と言って譲りませんでしたが、さすがにこれはダメだろうと(笑)。生暖かいミカンの食感は今も忘れられません」
母親の「七草がゆ」が食卓に上った際は「身の危険を感じた」という。
「何とも言えない苦みとえぐみが口に広がりました。草の味はこんなものかと思い食べ進めましたが、聞けば『道端で適当に摘んできた野草を入れた』という。もし毒性のあるものだったら、命にかかわる一大事でした」
トイアンナさんが続ける。
「食材の管理や栄養バランスを考え、美味しいものを作るのは本当に大変。料理が苦手な人が無理に頑張ろうとすると、味や見た目の悪さだけでなく、健康被害に繋がる料理が食卓に並びかねません。市販のものにちょっと味付けして出す、冷凍食品を上手に使うのが『格好いい』という文化ができれば、“メシマズ”の被害は少なくなるのでは」
料理家の故・神田川俊郎さんの名言どおり、料理は「ちょっとの工夫でこの美味さ」で充分なのかも。